H.I.S.(エイチ・アイ・エス、東証プライム9603、代表取締役社長・澤田秀太)は2026年9月11日の取締役会でラド観光株式会社の全株式を取得し子会社化することを決議しました。同日付で売り手の株式会社アドベンチャーと株式譲渡契約を締結しています。
発表の概要
ラド観光株式会社(大阪府大阪市北区大淀南、代表取締役社長・吉竹伸起、資本金30百万円、設立1968年11月25日)はバススキーツアー領域で高いシェアと仕入れネットワークを持つ旅行会社です。新型コロナウイルス流行下でも黒字を維持し安定した事業基盤を築いてきました。
株主は株式会社アドベンチャー(東証グロース6030、東京都渋谷区恵比寿、代表取締役社長・中村俊一、資本金4,072百万円、設立2006年12月21日、コンシューマ事業・投資事業)で、ラド観光の全株式を保有していました。直近3期(2023年6月期→2025年6月期)で売上高は2,208百万円から2,726百万円、当期純利益は87百万円から80百万円へ推移しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡元(売り手) | 株式会社アドベンチャー(東証グロース6030) |
| 取得対象 | ラド観光株式会社(全株式50,000株、議決権500個) |
| 事業内容 | 旅行事業(バススキーツアー領域) |
| スキーム | 株式譲渡による子会社化 |
| 取得価額 | 普通株式684百万円+取得関連費用4百万円 合計688百万円 |
| 契約締結日 | 2026年9月11日 |
| 株式譲渡実行日 | 2026年11月30日(予定) |
背景
H.I.S.は本件の取得理由について、創業50年目の2030年に向けた中期経営計画「Vision2030」で掲げている「コア領域の変革」と「新規領域への挑戦」の一環と説明しています。ラド観光はバススキーツアー領域で「圧倒的なシェアと強固な仕入ネットワーク」を持ち、新型コロナウイルス流行下でも黒字を維持してきました。開示では、H.I.S.が十分に進出できていない地方発地やバス商材をラド観光が補完するとしており、H.I.S.の販売網を生かした地方発着商品の共同企画とラド観光の特化型商品を全国の提携店へ展開する取り組みを子会社後のシナジーとして挙げています。
一方、売り手のアドベンチャー側の開示によると、同社は自社の航空券予約販売サイト「skyticket」のオンラインマーケティングノウハウを生かしラド観光のオンライン取引拡大を目指してきました。しかし主要事業である旅行事業を取り巻く環境の変化を受け、経営資源を集中する重要性が増したと開示は説明します。H.I.S.から株式取得の意向を受け、両社の事業拡大と高いシナジー効果が期待できることから譲渡を決めたと説明しています。
H.I.S.は自社の中期経営計画「Vision2030」で、地域事業(九州産交グループ)について「積極的なM&Aでバス会社の拠点を全国に拡大」する方針を掲げています。国内個人旅行領域でも「国内旅行領域、国内旅行関連領域での他社との連携強化」を挙げており、グループ全体のM&A戦略では総投資額400億円・25社(うち上場5社)を投資KPIとして示しています。本件はバス会社を子会社化し地方旅行分野で連携する取り組みであり、これらの方針と重なる位置づけといえます。
今後の予定
株式譲渡実行日は2026年11月30日の予定です。H.I.S.はこの取引による業績への影響を軽微とみています。アドベンチャーはラド観光が実行日をもって連結子会社から外れるとし、損益への影響は現在精査中だと説明しました。
解説
本件では、アドベンチャーが「skyticket」のノウハウを生かしラド観光のオンライン取引拡大を後押ししてきた経緯があります。ラド観光の売上高は2023年6月期の2,208百万円から2025年6月期には2,726百万円まで伸び、当期純利益も87百万円・66百万円・80百万円と黒字を維持してきました。その上でアドベンチャーは主要事業である旅行事業への経営資源集中を優先し、地方発地やバス商材で高い補完性を持つH.I.S.へ譲渡することを決定しています。
傘下で育った事業でも親会社の戦略変化により承継先が見直されること、その際に事業内容を補完し合う相手が選ばれるケースはM&Aの事例としてしばしば見られます。直近ではFOOD & LIFE COMPANIESがスシロー事業への経営資源集中を理由に京樽をSRSホールディングスへ譲渡した事例があり、買い手のSRS側は課題だった首都圏の店舗網拡充を取得の意義に挙げていました。こうした親会社側の事情による子会社売却の背景はなぜ大企業は子会社を売却するのかで解説しています。
次に読む
※本記事は2026年9月11日時点の開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の適時開示をご確認ください。

