M&Aの「リアル」を伝える経済メディア

読了目安 約5分

,

富士山マガジンサービス、九州の学習塾20拠点を譲受 10月実行

富士山マガジンサービス、九州の学習塾20拠点を譲受 10月実行|M&A Times

富士山マガジンサービス(証券コード3138、東証スタンダード・名証メイン、雑誌定期購読ECサイト「Fujisan.co.jp」を運営)は2026年9月7日、連結子会社Fujisan Academia Groupが福岡の学習塾事業などを譲り受ける契約を締結したと発表しました。事業譲渡期日は2026年10月1日です。

発表の概要

譲受対象は、①福岡市中央区の受験Vアカデミー(1983年2月設立、代表 肥川英司氏、Vネットホールディングス傘下)が九州・福岡地域で展開する学習塾事業、②肥川正嗣氏が全株式を保有するVネットワールドが福岡で展開するシェーン英会話教室事業、③ブイ管理システムが管理する学習塾テナント管理事業部門の3つです。

受験Vアカデミーの学習塾事業は2025年11月期売上高298,134千円・営業利益7,912千円で福岡中心に20拠点を構え、シェーン英会話事業は2026年3月期売上高118,529千円・営業損失10,687千円でした。姉妹塾である明光義塾九州が運営する個別指導塾事業は今回の対象外です。本開示は適時開示基準に該当しない任意開示として公表されたものです。

案件の条件一覧を見る譲渡元(売り手)・譲受側・対象事業・スキーム ほか(7項目)
項目内容
譲渡元(売り手)株式会社受験Vアカデミー・株式会社Vネットワールド・株式会社ブイ管理システム
譲受側株式会社Fujisan Academia Group(富士山マガジンサービスの連結子会社)
対象事業受験Vアカデミーの学習塾事業、Vネットワールドのシェーン英会話教室事業、ブイ管理システムが管理する学習塾テナント管理事業部門
スキーム事業譲渡(承継資産は敷金・保証金等96,701千円のみで負債の承継なし)
譲受価額相手先からの要請により非公表(東証の適時開示軽微基準の範囲内)
契約締結日2026年9月7日
事業譲渡期日2026年10月1日

背景

今回の契約に至る経緯を補足すると、当事者間では2026年6月30日付で基本合意が締結され、その後のデューデリジェンスと交渉を経て本契約の締結に至りました。譲受対象の資産は敷金・保証金や建物附属設備等の計96,701千円(2026年5月末時点)で、基本合意時点で想定していた資産174,713千円に未払金・退職給付引当金等の負債を含む一式から縮小しています。前払費用や前受金など事業運営に関係する勘定は事業譲渡日以降に実費ベースで精算する扱いです。

事業譲受の理由についてFujisan Academia Groupは、対象事業に通塾する生徒向けに2026年から開始したオンラインの医学部受験生向け個別指導プラン「精鋭オンライン」の展開を加速するとともに、夏期合宿やオンライン自習室、大学別直前対策授業といった付帯サービスの提供体制を構築するためと説明しています。

将来的には全国の地元密着型の塾や自習室を展開する事業者向けにサービスをフランチャイズ展開するモデルの確立も目指すとのことです。同社グループは2024年の学習塾事業参入後M&Aで拡大しており、横浜・センター北・大阪茨木・首里に加え2026年5月には市ヶ谷(医学部専門)の校舎を開設しており、本件によりさらに九州の20拠点が加わります。

買い手側の戦略を補足すると、雑誌ECを本業とする富士山マガジンサービスにとって学習塾はM&Aで立ち上げた新規事業であり、本件はそれを広げる動きです。同社は2026年8月26日公表の個人投資家向け説明会資料で、学習塾事業を含む新規事業を既存事業に続く「第3の矢」(売上全体の3.1%程度・2026年12月期第2四半期時点)と位置づけています。

この新規事業は2023年からCFO管掌のプロジェクトとしてM&Aによる立ち上げを進めてきたもので、2024年度にはしょうわ出版を中核に学習塾子会社Fujisan Academia Groupを発足させました。今回九州の事業を譲り受けるのはこの子会社です。同資料は2026年の方針として地方学生向け医学部オンライン個別指導の提供によるフランチャイズ化等での拡大を掲げており、対象事業の生徒にこの個別指導を展開できる本件はその方針に沿った動きといえます。

今後の予定

事業譲渡契約は2026年9月7日付で締結済みで、事業譲渡の実行は同年10月1日を予定しています。あわせて、受験Vアカデミーがシステム提供を受ける学習塾向け管理システムの開発会社e-siaについても、出資やシステム事業の譲受の可能性について協議を継続する方針です。富士山マガジンサービスは、本件による2026年12月期の連結業績への影響は軽微と見込んでいます。

解説

本件は、事業譲渡というスキームによって、譲受側の既存セグメントの売上高を上回る規模の事業を取り込んだ例です。受験Vアカデミーの学習塾事業単体の売上高298百万円は、富士山マガジンサービスのEdTech事業セグメントの2025年12月期売上高160.7百万円の約1.9倍にあたります。

事業譲渡は承継する資産・負債を個別に選べる設計のため、買い手が引き継ぐのは敷金・保証金や設備など計96,701千円の資産で、開示された承継対象に負債の計上はありません。

加えて、6月30日の基本合意時点で想定していた承継対象はその後のデューデリジェンスを経て縮小しており、条件が交渉過程で変化した経過も読み取れます。

会社や事業の譲渡を検討する経営者にとっては、基本合意はゴールではなくデューデリジェンス次第で承継範囲や条件が変わりうる通過点であることを踏まえ、想定と異なる結果にも備えて交渉に臨む姿勢が欠かせません。会社売却の流れや準備の進め方は会社売却の進め方完全ガイドで解説しています。

次に読む

※本記事は2026年9月8日時点の開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の開示をご確認ください。

出典