株式会社三ッ星(5820・東証スタンダード・大阪市中央区の電線メーカー)は2026年9月10日、天進商事株式会社を子会社化することを取締役会で決議しました。株式交付と現金対価による株式取得を組み合わせるスキームです。
発表の概要
天進商事株式会社(東京都台東区、2001年設立)は銅を中心とする非鉄金属スクラップの回収・輸出入・販売を主力事業とする会社です。回収金属の約8割を銅が占め、千葉県市原市に解体・保管を行う拠点を持ちます。2026年3月期の売上高は149億36百万円、営業利益は94百万円でした。株主は代表取締役の辻恵美子氏が51%、孫陽氏が25%、陳紹年氏が24%を保有しています。
案件の条件一覧を見る取得対象・事業内容・スキーム・対価 ほか(7項目)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得対象 | 天進商事株式会社(東京都台東区、銅を中心とする非鉄金属スクラップの回収・輸出入・販売) |
| 事業内容 | 銅を中心とする非鉄金属スクラップの回収、輸出入及び販売(取扱金属の約8割が銅、千葉県市原市に保管拠点) |
| スキーム | 簡易株式交付(会社法816条の4第1項、株主総会の承認不要)と、個人株主からの現金対価による株式取得の組み合わせ |
| 対価 | 株式交付(新株173,300株を発行)+現金対価150百万円(原則固定。取得株数・1株当たり価額は第三者算定機関のDCF法を含む算定結果を踏まえ調整)。天進商事の発行済株式51%を取得し連結子会社化 |
| 新株発行数・希薄化 | 173,300株/希薄化3.87%(辻恵美子氏・陳紹年氏は交付後に三ッ星株式を3.72%保有) |
| 譲渡申込期日 | 2026年10月23日 |
| 効力発生日 | 2026年10月26日(予定。有価証券届出書の効力発生が条件) |
背景
本件のスキーム採用について三ッ星は「当社の手元資金の流出を一定程度抑制するとともに、当社株式の発行による既存株主の持分の希薄化にも配慮しつつ、天進商事の株主との中長期的な利害関係の共有を図ることができる」ためと説明しています。
現金対価150百万円は、2025年12月16日付の第三者割当増資で確保したM&A資金(新株式分90百万円・新株予約権分802百万円、合計892百万円)から充当します。同増資の開示では、独占交渉権を得て交渉中の案件が1件あり買収対価及び初期費用として902百万円を想定している旨が記載されていました。
買収目的は2026年5月12日公表の中期経営計画とも関わります。同計画は2029年3月期に連結売上高150億円・営業利益8億円・ROE6.0%以上を目標に掲げ、経営戦略の柱の一つ「事業ポートフォリオの変革」の具体策として「M&Aによる事業拡大」を挙げています(起点の2026年3月期実績は売上高117億円・営業利益3億55百万円)。
三ッ星はAIデータセンターの増設や電気自動車の普及による中長期的な銅需要の拡大を背景に、天進商事の子会社化とリソースイノベーション事業部の新設で非鉄金属リサイクル事業に参入します。選別・破砕や溶解・鋳造への拡大は検討段階とし、既存の電線事業との一体化を直ちに目的とするものではないとしています。
今後の予定
本株式交付は金融商品取引法による有価証券届出書の効力発生が条件です。譲渡申込期日は2026年10月23日、効力発生日は2026年10月26日と定められています。新規事業の開始は2026年10月下旬を予定し、天進商事の運転資金として必要に応じ最大500百万円を貸し付ける計画です。
解説
本件は天進商事の株主に対価の受け取り方を選ばせた点が特徴です。株式保有を望む株主には株式交付、現金化を望む株主には現金対価を用意し、辻恵美子氏と陳紹年氏は三ッ星株式を保有しつつ経営との関わりを続けます。三ッ星側は現金対価を150百万円に抑え手元資金の流出を防ぎました。
対価設計には株式譲渡や事業譲渡のほか支払いを後払いにするアーンアウトという手法もあり、2021年施行の株式交付制度も対価の一部を自社株式にできる選択肢として使われ始めています。会社の売却・承継を検討する経営者にとって、対価を現金と株式のどちらでどこまで受け取るかも交渉の論点になります。準備の進め方は会社売却の進め方完全ガイドで解説しています。
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※本記事は2026年9月10日時点の開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の適時開示をご確認ください。

