M&Aの「リアル」を伝える経済メディア

読了目安 約5分

,

ツムラ、養命酒製造を68億円で子会社化 上場廃止を経て完了

ツムラ、養命酒製造を68億円で子会社化 非公開化を経て完了|M&A Times

医療用漢方製剤大手のツムラ(証券コード4540・東証プライム)は2026年9月1日、養命酒製造株式会社の株式取得を完了したと発表しました。同社の筆頭株主だった湯沢株式会社が保有する全株式を68億円で取得し子会社化しています。

発表の概要

養命酒製造は東京都渋谷区に本社を置き、1923年6月20日に設立されました。薬用養命酒をはじめとする酒類・医薬品等の製造販売を主力とし、本取引前は飲食店・売店の運営や不動産賃貸なども手がけていました。同社は2026年2月25日公表の4社間の取引基本契約に基づき、株式会社レノによるTOBと上場廃止を経て非公開化された後、非事業性資産の切り出しを経て今回ツムラの子会社となりました。

項目内容
譲渡元湯沢株式会社(養命酒製造の筆頭株主)
取得対象養命酒製造株式会社の普通株式6株(所有割合100.0%)
スキームTOBによる非公開化・スクイーズアウト・非事業性資産の切り出しを経た相対での株式譲渡
取得価額68億円(取得日時点の財務諸表に基づく価格調整・取引費用等により変動の可能性あり)
取引基本契約・株式譲渡契約の締結日2026年2月24日(2月25日公表)
取得日2026年9月1日

本取引のスキーム

ステップ主な内容
TOBの実施株式会社レノが養命酒製造株式へ公開買付け(1株4,050円、買付予定数9,282,257株、下限1,903,900株、期間2026年2月25日〜4月8日の30営業日)を実施。対象者の自己株式と筆頭株主・湯沢の保有分は対象外
スクイーズアウトTOB成立後、養命酒製造の株主をレノと湯沢のみとする手続きを実施
③湯沢への相対譲渡有価証券報告書提出義務の免除申請の承認を得た後、レノが保有株式の全てを湯沢へ譲渡し、湯沢が唯一の株主に
④非事業性資産の切り出し養命酒製造の有価証券関連資産・不動産関連資産を、剰余金の配当および/または吸収分割により湯沢へ移管
⑤ツムラによる株式取得主力「養命酒」中心の事業への経営資源集中を企図した事業再編の完了後、湯沢が保有する対象者株式の全てをツムラが68億円で取得

背景

ツムラが本取引に踏み切った目的について同社は医療用漢方製剤領域で培った強みと、養命酒製造が持つ「養生」の知見・ブランド価値を融合し、一般用医薬品・ヘルスケア領域の成長を加速させることを挙げています。長期経営ビジョン「TSUMURA VISION “Cho-WA” 2031」は治療・未病・養生を通じた価値創造を掲げており、本取引はその実現に向けた取り組みだと考えられます。なお2026年2月25日の開示では、養命酒製造の主力商品「養命酒」を中心とした経営・事業運営体制への移行と、これに必要な経営リソースの集約・再分配を、ツムラへの相対譲渡実行の前提条件としたことも明らかにされています。

ツムラの戦略上の位置づけについて補足すると、2026年8月6日公表の2026年度第1四半期決算説明会資料では「養命酒製造の株式取得は予定通り進捗、事業成長に向けた戦略・体制等の基盤を整備中」としています。同資料はヘルスケアカンパニー(一般用医薬品・医薬部外品)を「戦略的育成」に位置づけており、薬用養命酒の価値再創造・顧客基盤とチャネルの変革・事業ポートフォリオ変革を掲げるほか、薬食同源製品では養命酒製造の養生商品開発機能とのシナジーについて言及しています。また、養命酒製造の連結後にはヘルスケアカンパニーのROIC計画を策定・開示する予定とのことです。

今後の予定

養命酒製造の連結業績への取り込みは2027年3月期第2四半期からを予定しており、業績への影響については現在精査中とのことです。

解説

本件の特徴は養命酒製造を会社ごと売買するのではなく、TOB・非公開化とスクイーズアウトで株主を整理した後に、有価証券・不動産等の非事業性資産を配当や吸収分割で切り出し、養命酒を中心とする事業だけをツムラが取得する形で完了した点です。

買い手が欲しい事業と、そうでない資産を分けて設計するこの手法は上場企業の非公開化に限らず、中小企業の事業承継でも使われます。例えば会社が保有する不動産をオーナー側に残し事業だけを譲渡するように、譲渡する範囲と残す資産を切り分けることで交渉が進めやすくなる場合があります。自社の株式や不動産をどこまで譲渡対象に含めるかを整理することが、会社売却の準備の出発点になります。

※本記事は2026年9月1日時点の開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の公表資料をご確認ください。

出典

次に読む