2026年9月1日、組込みソフトウェアを手がけるイーソル(証券コード4420・東証スタンダード上場)はマネジメント・バイアウト(MBO)の一環として行われる公開買付けに賛同し、株主に応募を推奨する意見を表明しました。公開買付者はベインキャピタルの子会社BCJ-110で買付価格は1株820円、成立後は上場廃止を予定しています。
発表の概要
イーソルは1975年5月に制御系ソフトウェア開発の受託会社エルグとして設立され、2001年にイーソルへ商号を変更しました。自動車や産業機器、デジタル家電向け機器を制御するリアルタイムOS等を扱う組込みソフトウェア事業と、ニッチ市場向けハードウェアを開発するセンシングソリューション事業の2セグメントを展開しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象会社 | イーソル株式会社(証券コード4420・東証スタンダード) |
| 公開買付者 | 株式会社BCJ-110(ベインキャピタルが議決権を間接保有するBCJ-109の完全子会社、2026年6月1日設立) |
| スキーム | MBOによる非公開化を目的としたTOB |
| 買付価格 | 普通株式1株につき820円 |
| 買付期間 | 2026年9月2日〜2026年10月19日(30営業日) |
| 買付予定数の下限 | 10,535,800株(下限で買付けた場合の株券等所有割合66.67%)・上限なし |
| 対象会社の意見 | 賛同のうえ株主に応募を推奨 |
背景
MBOに至った背景について代表取締役社長CEO兼CTOの権藤正樹氏は、SDV(Software Defined Vehicle)等を背景に拡大する組込みソフトウェア市場への投資を、上場を維持したまま機動的に行うことは難しく、単独での成長には先行投資による短期的な株価下落等の一定の制約があると考えるためとのことです。
イーソルも、上場を維持したまま先行投資を伴う施策を実施すれば短期的な株価下落や配当の減少などで既存株主の利益を損なう可能性があるとしています。権藤氏は2025年7月から12月にかけてベインキャピタルを含む5社のPEファンドと協議したうえで投資実績と人的ネットワークの観点から同社をパートナーに選び、経営を継続しながら中長期目線で投資を進める判断に至りました。
株主対応では権藤氏ら現・元役員と子会社取締役の計6名が応募契約を結び合計8.51%分の保有株式の応募を約束した一方、取締役上山伸幸氏とその親族が株主の資産管理会社ビーオービー(6.09%)と、前代表取締役の長谷川勝敏氏とその親族が株主の資産管理会社KAM(7.15%)の計13.24%は不応募契約を結びTOBに応募しません。
両社の株式はスクイーズアウト完了後に会社が1株663円で自己株式として取得する予定で、これはみなし配当の益金不算入規定を踏まえ応募した場合の税引後手取り額を上回らない金額としてベインキャピタルが提案したとのことです。
今後の予定
公開買付期間は2026年9月2日から10月19日までの30営業日です。成立後は会社法上の株式併合でスクイーズアウトを実施し、公開買付者と不応募株主のみを株主とする非公開化を進めます。完了後は権藤氏が公開買付者親会社の株式を取得し経営を継続する予定です。イーソルはTOBの成立を条件に2026年12月期の期末配当を無配とする修正も同日付で公表しています。
解説
特別委員会はTOB価格820円のプレミアムについて、MBO事例108件の中央値42.5〜49.3%と比べ「低い水準といわざるを得ない」と認めつつ、DCF法等の算定レンジ中央値を超える水準であることや当初提案の600円から交渉により計5回・220円引き上げられ820円に至った経緯を総合考慮し、賛同と応募推奨を答申しました。ただしこの答申は委員3名中2名の多数決によるもので、委員の三浦亮太氏は「近時の他のMBO事例におけるプレミアム水準と比較すると低い」「直近数ヵ月間において820円よりも高額で購入した株主が存在し、本公開買付価格ではそのような株主が損失を被る」として、応募するか否かは株主の判断に委ねるべきとする少数意見を述べています。
上記のように、本件はTOB価格の妥当性はプレミアム率という単一の数字ではなく算定結果と交渉過程を含めて判断されることがわかる実例です。提示価格の水準だけでなく算定手法や交渉の積み重ねを確認することの重要性がわかります。なお自己株式取得の対価には税務上みなし配当が生じ、法人株主には益金不算入規定が適用されるため、663円(株式併合前の1株当たり換算)は応募した場合の税引後手取り額を上回らない金額として設定されています。
※本記事は2026年9月1日時点の開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の適時開示をご確認ください。
出典
- イーソル「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」(イーソル、2026年9月1日)
- イーソル「株式会社BCJ-110によるイーソル株式会社の普通株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」(イーソル、2026年9月1日)

