建機レンタル大手のカナモト(証券コード9678、東証プライム・札証)は2026年9月4日、群馬県高崎市の高崎事務器株式会社の全株式を取得し、完全子会社の株式会社TJR・株式会社近藤リースと合わせて3社を子会社化すると発表しました。同日付で株式譲渡契約を締結し、実行は2026年9月中を予定しています。
発表の概要
高崎事務器は建設工事現場向けのユニットハウスや仮設トイレ、オフィス家具、OA機器、測量機などのレンタル・販売を手がけ、運搬・設置・メンテナンスまで一貫して提供する体制を関東エリアで築いてきました。現法人は2020年2月10日設立で、2025年12月期の連結売上高は50.17億円・営業利益9.35億円・純利益4.23億円と、開示された2023年12月期から2025年12月期にかけて増収増益が続いています。完全子会社の株式会社TJR(群馬県伊勢崎市)はユニットハウス等の運搬・組立据付・メンテナンスを、株式会社近藤リース(静岡市駿河区)はイベント・催事向けの大型テントや音響・映像機器のレンタルを手がける会社です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡元(売り手) | MCP5投資事業有限責任組合(持株比率82.1%)・個人株主3名(17.9%) |
| 取得対象 | 高崎事務器株式会社(群馬県高崎市、代表取締役社長・鉃洋一氏)と完全子会社の株式会社TJR・株式会社近藤リース |
| 事業内容 | 現場ファシリティ関連のユニットハウス・仮設トイレ等のレンタル・販売(高崎事務器)、運搬・組立据付・メンテナンス(TJR)、イベント設営・大型テント等のレンタル(近藤リース) |
| スキーム | 株式譲渡による全株式(78,001株、議決権所有割合100%)の取得 |
| 取得価格 | 相手先の意向により非開示(株式価値評価の結果に基づき相手先との協議の上で決定) |
| 契約締結日 | 2026年9月4日 |
| 株式譲渡実行日 | 2026年9月中(予定) |
背景
株式取得の理由についてカナモトは、建設機械レンタルを中核に全国展開する自社の営業ネットワークと、高崎事務器が関東エリアで培った現場ファシリティ関連サービスのノウハウ・運営体制を組み合わせることで、顧客への提案力向上とサービス拡充を図ることができると説明しています。あわせて自社の資産・調達機能・物流ネットワークを活用し高崎事務器の商品供給力とサービス提供力を高めることで、関東エリアの事業基盤強化と企業価値向上につながるとしています。
売り手であるMCP5投資事業有限責任組合は、コバルトインベストメント株式会社を無限責任組合員(GP)として2018年1月19日に設立された投資ファンドです。業務受託・投資助言はみずほキャピタルパートナーズ株式会社(現・MCPキャピタル株式会社)が担い、独立行政法人中小企業基盤整備機構が60億円を出資するファンド総額300億円の枠組みで運営されています。事業承継等の経営課題を抱える中堅・中小企業を投資対象にバイアウト投資を行い、後継者の招聘・育成や経営管理の高度化等のハンズオン支援を通じて企業価値向上を図る方針を掲げているファンドです。
カナモトの経営戦略から見ると本件は、2024年12月に策定した連結経営計画「Progress 65」(2025〜2029年度)の施策の一環とみなせます。同計画では継続的なレンタル資産・人的資本への投資と国内外でのM&Aを通じたグローバルTOP5入りを基本方針に掲げており、重点施策として「建機レンタル及び周辺ビジネスでのM&A推進」を明記しています。高崎事務器が手がける現場ファシリティ関連サービスは建機レンタルの周辺ビジネスにあたルため、本件はこの方針に沿った取り組みといえます。
今後の予定
株式譲渡の実行日は2026年9月中を予定しています。カナモトは本件による当期・来期の連結業績への影響は軽微と見込んでおり、今後開示すべき事象が生じた場合は速やかに開示するとしています。
解説
本件からは、中小企業成長支援ファンドの傘下で成長した中堅企業が、大手事業会社への譲渡という形で出口を迎える実例が確認できます。高崎事務器はMCP5投資事業有限責任組合の傘下で2023年12月期から2025年12月期にかけて増収増益を続け、その実績を経て建機レンタル大手のカナモトグループの完全子会社となりました。
会社の譲渡先はM&A仲介を通じた同業・異業種の事業会社に限らず、成長支援ファンドへ株式を譲渡し、ハンズオン支援を受けながら経営基盤を強化したうえで次の担い手へ引き継ぐという選択肢もあります。本件はまさにこの後者の道筋をたどり、ファンドへの譲渡が次の担い手につなぐ中継ぎとして機能した実例です。一般に譲渡の検討では自社の事業や数字を正確に示せることが交渉の入り口になります。詳しくは会社売却の準備は何から?磨き上げの進め方をご覧ください。
※本記事は2026年9月4日時点の適時開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の適時開示をご確認ください。
出典
- カナモト「高崎事務器株式会社の株式取得に関するお知らせ」(2026年9月4日)
- カナモト 連結経営計画「Progress 65」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業成長支援ファンド『MCP5投資事業有限責任組合』に出資を行う組合契約を締結」(2019年3月15日)

