バイアウトというと、プロスポーツ選手の契約解除をイメージする方もいるかもしれません。本記事で扱うのは、M&Aや企業買収の文脈で使われる「バイアウト」です。経営陣や従業員、投資ファンドなどが主体となり、対象企業の経営権を取得する手法について解説します。
バイアウトとは
結論から言うと、バイアウトとは、経営陣・従業員・ファンドなどが対象企業の経営権を取得する買収の総称です。買い手が誰かによって、MBO・LBO・EBO・MBIなどに分類されます。本記事は、事業承継や売却の選択肢としてバイアウトを検討する中小企業経営者、M&A実務を学び始めた方に向けて解説します。後継者不在でM&A自体を迷っている場合は、事業承継の選択肢まとめを先にご覧ください。
バイアウトは英語のbuy-out(買い取る)に由来します。対象企業の発行済株式の過半数を取得し、経営の主導権を握る点が特徴です。たとえば発行済株式が1万株の会社なら、5,001株以上を取得すれば株主総会の普通決議を単独で可決できます。
MBO・LBO・EBO・MBIの違い
バイアウトは、買い手が誰か、資金をどう調達するかによっていくつかの型に分かれます。代表的な4つの型を比較表にまとめました。
| 名称 | 主体 | 資金調達 | 典型的な場面 |
|---|---|---|---|
| MBO | 現経営陣 | 自己資金+金融機関等からの借入 | オーナー経営者からの承継、上場廃止による非公開化 |
| LBO | 買収する企業・ファンド | 対象企業の資産や将来キャッシュフローを担保にした借入 | PEファンドによる企業買収、大型M&A |
| EBO | 役員以外の従業員 | 自己資金・金融機関融資・持株会制度の活用 | 後継者不在の中小企業で社員が引き継ぐ承継型M&A |
| MBI | 社外の経営のプロ・投資家 | ファンド等からの出資と借入の組み合わせ | 経営不振企業の再建、専門経営者による事業拡大 |
MBOは「誰が買うか」、LBOは「どう資金調達するか」という異なる軸の呼び方で、実務では両者を組み合わせた「MBOによるLBO」も珍しくありません。社外の第三者経営者が主体となるMBIは、後継者不在企業の再建や事業拡大の場面で使われます。
実務での意味
買い手にとって
MBOやEBOでは経営陣・従業員自身が買い手となるため、社外への売却に比べて社内外の混乱が少なく、事業の継続性を保ちやすい利点があります。一方で買収資金の調達がハードルとなり、多くの場合は金融機関からの融資やPEファンドからの出資が必要です。融資審査や出資条件の交渉は、顧問税理士や中小企業診断士、地域金融機関の事業承継担当部署などの専門家に相談しながら進めるのが一般的です。手数料や金利の負担は買い手側が負う形が基本で、規模や条件により変動します。
売り手にとって
オーナー経営者にとってバイアウトは、親族に後継者がいない場合の承継手段の一つです。同業他社などの第三者に売却するのではなく、気心の知れた経営陣や従業員に引き継げる点は、社風や取引先との関係を維持しやすい安心材料になります。ただし経営陣・従業員だけでは対象企業の規模に見合う買収資金を用意できないケースも多く、PEファンドが資金面で参画するMBOも一般的です。具体的な進め方は会社売却の進め方完全ガイドでも解説しています。
まとめ
- バイアウトとは、経営陣・従業員・ファンドなどが主体となり対象企業の経営権を取得する買収の総称
- 主体や資金調達方法によって、MBO・LBO・EBO・MBIなどに分類される
- 中小企業オーナーにとっては、親族外承継や資金調達を伴う売却の選択肢の一つになる
次に読む
- MBOとは:経営陣による買収の仕組みと利益相反の論点を、さらに詳しく解説します
- LBOとは:借入を活用した資金調達の仕組みとリスクを解説します
- 従業員承継(EBO)とは:従業員が会社を引き継ぐ仕組みと資金面の課題を解説します

