島根県松江市の農業機械メーカーMAM株式会社(旧三菱マヒンドラ農機)は2026年9月30日、国内製品の補修用部品供給・製品保証を承継する新会社AGRINA(島根県松江市)の全株式を東京コンポーネント株式会社(東京都品川区、Boldグループの半導体・電子部品専門商社)へ譲渡したと発表しました。
MAMは2026年3月に農業機械事業からの撤退を決めており、同日をもって1914年の創業から112年続いた同事業を終了しました。
発表の概要
AGRINAは2026年7月30日、国内製品の補修用部品供給および製品保証事業を承継する会社としてMAMが設立しました。資本金1,000万円、従業員40名(予定)で、部品センターを岡山県瀬戸内市と北海道苫小牧市に置きます。事業を新会社に切り出して全株式を譲渡する手法はカーブアウトと呼ばれ、事業売却の一形態です。
案件の条件一覧を見る譲渡元(売り手)・譲受側(買い手)・取得対象・事業内容 ほか(10項目)
背景
発端は2026年3月2日の撤退決定です。MAM(当時は三菱マヒンドラ農機)は農業機械の研究開発・生産・国内外販売から撤退し、継続事業以外は会社法に基づき解散して通常清算すると発表しました。
理由は「近年の業界を取り巻く市場環境および需要構造の変化、並びに生産体制に関する諸条件を総合的に勘案し、長期間に亘って事業としての収益性と将来の持続可能性を慎重に見極めた結果、当該事業の安定的な継続は困難であるとの結論に至りました」と説明しています。
株主のマヒンドラ&マヒンドラはインドの証券取引所への届出で、収益回復策を重ねても損失が続いたとし、2025年3月期の純損失を約22.7億ルピー(1ルピー1.75円換算で約40億円)と記載しています。退職となる社員は約900人の見込みと農業協同組合新聞が報じています。
撤退決定の後、MAMは残す価値のある事業と資産を個別に切り出して譲渡してきました。6月3日には開発中だった新型フルクローラートラクターの開発資産を建設機械メーカーの諸岡(茨城県龍ケ崎市)へ譲渡する契約を結び、7月10日には農業施設事業を手がけるグループ会社の菱農エンジニアリングの全株式を山陰中央テレビジョン放送へ譲渡しました。
そして本件はこれらの流れに続く形であり、7月30日に補修用部品供給と製品保証を承継するAGRINAを設立し、9月10日に事業整理の一環として社名をMAMに変更、本件の通り9月30日にAGRINAの全株式を東京コンポーネントへ譲渡しています。
MAMは撤退発表の時点で「お客様への影響を最小限に抑えるため」補修用部品供給と製品保証だけは続けると表明しており、AGRINAはその受け皿です。新会社設立についてMAMが「当社事業終了後も継続して提供される体制が整いました」としているのは、MAM自体が清算で消滅しても既存ユーザーへの部品供給と保証期間内の保証が途切れない状態になったという意味です。約900人が退職する一方で、継続事業は従業員40名(予定)のAGRINAに移ります。
承継先のBoldグループは国内外で投資事業を展開する企業グループです。子会社化の目的についてBold Investmentは、東京コンポーネントが培った調達力と物流・DX分野のノウハウを挙げ、両社の経営資源とノウハウを融合してサービス品質の向上と中期的な事業成長を図るとしています。
今後の予定
MAM・MAMS株式会社(旧三菱農機販売)・リョーノーファクトリー株式会社の3社は9月30日の事業活動終了後、会社法に基づく手続きを進め解散決議に向けた業務を行うとしています。グループ会社の菱農資産管理株式会社については、方向性が決まり次第発表するとしています。
解説
MAMが新会社に切り出したのは補修用部品供給と製品保証の2事業で、AGRINA公式サイトによると整備・修理などのアフターサービスは対象外です。MAMはAGRINAが東京コンポーネントのグループで顧客向けの体制を維持・継続するとしています。
一般に事業そのものを畳む場合でも、既存顧客への部品供給や保証のように終了後も需要が残る部分は切り出して引き受け手に渡せる可能性があります。
廃業を決めた後でも、まず専門家に相談してみるのも一手です。本件の部品供給や保証のように、終了後も残る需要に引き受け手が付くことがあります。M&A Timesの無料相談では状況に応じて仲介会社や専門家をご紹介しています。
※本記事は2026年10月6日時点の公表資料に基づいています。最新の状況は当事会社の公表資料をご確認ください。
出典
- MAM株式会社「補修用部品供給および製品保証を承継する新会社設立のお知らせ」(2026年9月30日)
- MAM株式会社「事業活動終了および解散についてのお知らせ」(2026年9月30日)
- MAM株式会社「112年の感謝を込めて」(2026年9月30日)
- MAM株式会社「社名変更のお知らせ」(2026年9月10日)
- 三菱マヒンドラ農機株式会社「当社事業方針に関する重要なお知らせ」(2026年3月2日・旧サイトのアーカイブ)
- 三菱マヒンドラ農機株式会社「菱農エンジニアリング株式会社の株式譲渡に関するお知らせ」(2026年7月15日・旧サイトのアーカイブ)
- Mahindra & Mahindra Ltd.「Intimation under Regulation 30」(2026年3月2日)
- 三菱重工業株式会社「三菱マヒンドラ農機株式会社が発足」(2015年10月1日)
- 株式会社諸岡「新型フルクローラートラクターの開発資産譲渡契約について」(2026年6月3日)
- 農業協同組合新聞「三菱マヒンドラ農機が農機事業撤退 2026年度上期で生産・販売終了 会社は解散」(2026年3月3日)
- 株式会社Bold Investment「Boldグループにて農機補修部品・製品保証事業を担う株式会社AGRINAを子会社化」(PR TIMES・2026年10月2日)
- 株式会社AGRINA公式サイト

