ナレルグループ(9163・東証グロース、建設技術者派遣が主力)は2026年10月15日、連結子会社ATJC(IT技術者派遣等)の全株式を情報セキュリティ事業などを手がけるセキュアソフトへ12億円(基本譲渡価額)で譲渡すると発表しました。同日の取締役会で決議し株式譲渡契約を締結しています。
発表の概要
ATJCは2007年12月設立の東京都千代田区の企業で、IT技術者派遣(SES)を主力に約400名の技術者を擁し、DXコンサルティングやシステム受託開発等も手がけています。本件はナレルグループが連結子会社を株式譲渡で売却するものです。ナレルグループは譲渡価額を複数の候補先から提示された条件、ATJCの財務状況および将来の収益見通し等を総合的に勘案し、セキュアソフトとの協議を経て決定したとしています。
案件の条件一覧を見る譲渡元(売り手)・譲渡先(買い手)・譲渡対象・事業内容 ほか(9項目)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡元(売り手) | 株式会社ナレルグループ(証券コード9163、東証グロース、代表取締役 柴田直樹) |
| 譲渡先(買い手) | 株式会社セキュアソフト(東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目31番11号、代表取締役 姜昇旭、2002年8月30日設立、資本金8,850万円) |
| 譲渡対象 | 株式会社ATJC(東京都千代田区九段北4-1-9、代表取締役 齋藤拓、2007年12月設立、資本金4,800万円)の発行済株式400株(全株式、議決権所有割合100.0%) |
| 事業内容 | IT技術者派遣(SES)、DXコンサルティング、システム受託開発等 |
| スキーム | 株式譲渡(ナレルグループの連結子会社ATJCの全株式をセキュアソフトへ譲渡) |
| 譲渡価額 | 12億円(基本譲渡価額。株式譲渡契約に定める価格調整を反映した金額が最終的な譲渡価額となる) |
| 契約締結日 | 2026年10月15日 |
| 株式譲渡実行日 | 2026年10月30日(予定) |
| ATJCの業績(個別、百万円未満切り捨て) | 2023年10月期 売上高19億5,400万円・営業利益1億600万円・経常利益1億2,000万円・当期純利益8,500万円・純資産3億4,700万円 2024年10月期 売上高22億9,400万円・営業利益1億5,500万円・経常利益1億6,000万円・当期純利益1億1,300万円・純資産4億6,000万円 2025年10月期 売上高25億3,900万円・営業利益1億3,100万円・経常利益1億3,600万円・当期純利益9,600万円・純資産4億5,700万円 |
背景
譲渡の理由についてナレルグループは、ATJCのさらなる成長と収益性の向上にはIT領域における営業基盤の拡充や技術者の採用・育成等への継続的な投資が必要だとする一方、ナレルグループは中期経営計画に基づき建設DXや職人領域等の重点成長領域への投資を優先する方針です。
そのためATJCの事業についてはIT領域に強みを持つ企業のもとで事業を展開することが、同事業のさらなる成長につながると判断したとのことです。上場企業が子会社を切り出すカーブアウトの一例です。
譲渡先のセキュアソフトは情報セキュリティ事業やIT人材サービス事業等を手がける会社で、グループ従業員は2,102名(2026年4月現在)です。ナレルグループはセキュアソフトのIT人材サービスおよび情報セキュリティ領域における事業基盤や専門性とATJCとの相乗効果を譲渡先選定の理由に挙げています。
ATJCは2020年12月に創業者からの株式譲渡でナレルグループに参画した会社です。ナレルグループは2025年12月公表の中期経営計画「Change and Growth 2030」で「ITソリューション事業の中核企業であるATJCにて、建設業界向けICT事業を発足」と記し、ATJCがグループシナジーを発揮し、建設DXを展開すると説明していました。
今回はATJCの建設DXコンサルティング事業を、本株式譲渡に関連して連結子会社のワールドコーポレーション(建設技術者派遣の中核会社)へ移管する予定です。ATJC本体はSES等を含めてセキュアソフトへ譲渡し、建設DX部分だけをグループ内に残します。
ナレルグループは会計上の損失を見込みつつも、経営資源を重点成長領域に集中することが中長期的な企業価値向上に資すると判断したとしています。ITソリューション事業は非継続事業として区分表示し、2026年10月期の連結業績に本株式譲渡による損失を計上する見込みです。
損失が見込まれるのは、ATJC買収時に計上したのれん(有価証券報告書でITソリューション事業に配分された10億8,600万円)とATJCの純資産4億5,700万円を合わせた連結上の帳簿価額が、譲渡価額12億円を上回るためです。ナレルグループはIFRSを採用しておりのれんは償却されないため、買収時の金額が残っています。損失の計上額は価格調整を経て確定するとして精査中です。
今後の予定
株式譲渡実行日は2026年10月30日を予定しています。ATJCの建設DXコンサルティング事業はワールドコーポレーションへ移管する予定で、時期は開示されていません。ナレルグループは2027年10月期以降の連結業績にATJCの連結除外による影響が生じる見込みとしています。
解説
ナレルグループが開示した12億円は株式譲渡契約に定める基本譲渡価額で、最終的な譲渡価額は同契約に定める価格調整を反映した金額になるとしています。同社は本件で見込む損失の計上額についても、譲渡価額が価格調整を経て確定するため現在精査中と説明しています。
本件の調整方法は開示されていませんが、価格調整条項は一般にクロージング時点の純資産や運転資本などに応じて基本価額を増減させる仕組みです。契約書に載った金額がそのまま受取額になるとは限らず、どの時点の何の数字で増減させるかによって売り手が受け取る金額は変化します。
価格調整の仕組みは運転資本調整とは?M&A価格調整の仕組みで、契約書の記載事項は株式譲渡契約書(SPA)とはで詳しく解説しています。
※本記事は2026年10月16日時点の開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の公表資料をご確認ください。
出典
- 株式会社ナレルグループ(証券コード9163)「株式会社ATJCの株式譲渡(子会社の異動)に関するお知らせ」(2026年10月15日・PDF)
- 株式会社ナレルグループ(証券コード9163)「中期経営計画(事業計画及び成長可能性に関する資料)」(2025年12月12日・PDF)
- 株式会社ナレルグループ「有価証券報告書-第7期(2024年11月1日-2025年10月31日)」(PDF)
- 株式会社セキュアソフト 会社概要

