2024年に東京証券取引所で上場廃止となった企業は94社で、比較可能な2015年以降で最多となりました。新規上場の93社を上回り、東証の上場企業数は2013年の大阪証券取引所現物市場統合以来、初めて減少に転じています。このうち経営陣が自社株を買い取るMBO(マネジメント・バイアウト)を伴う非公開化は21社です。
上場廃止が新規上場を上回る背景
2024年の上場廃止94社の内訳は、完全子会社化31社、MBO21社、他社による買収17社でした。データは東証公表を基にしたマールオンライン調べです(2024年12月17日)。大和総研の吉川英徳氏によると、2025年2月21日時点で既に26社の非上場化が予定され、ペースは前年を上回っていたといいます(大和総研、2025年3月3日)。同社が2026年1月に公表した別のレポートでは、2025年6月から11月の半年間だけで16件のMBO案件が公表されたと分析されました。
フューチャーは1株2,451円でのTOBによりMBOを公表しました。JPMCもサンライズキャピタルと組み、1株2,250円のTOBで非公開化を進めています。いずれも東証プライム上場企業が、PEファンドと連携して非公開化する近年の典型例だと考えられます。
東証の要請とPBR1倍割れという圧力
背景の一つが、東京証券取引所が2023年3月31日付で公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」です(東証、2023年3月31日)。上場企業に対し、売上や利益だけでなく資本コストや資本収益性を意識した経営を求める内容でした。この要請の背景にあるのが、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの問題です。日本経済新聞によれば、2025年4月7日時点で東証プライムの継続比較可能な約1,630社のうち54%にあたる874社がPBR1倍を下回っていました(日本経済新聞、2025年4月7日)。
PBRが0.7倍というのは、純資産100億円の会社なら株式市場での評価が70億円にとどまっている状態だと考えられます。市場からの評価改善圧力を受け続けるより、非公開化して自らの裁量で経営改革を進める判断をする経営陣もいると考えられます。あくまで一般的な傾向であり、個別のMBO案件ごとの動機は非公表ですが、PBR1倍割れは非公開化の是非を検討する一つのきっかけになっていると考えられます。
上場維持コストとアクティビスト対応
大和総研の吉川氏は、非上場化が増える要因として、親子上場における少数株主保護強化に伴う上場コストの増加、東証の流通時価総額基準への対応負担、アクティビスト投資家対応や非友好的買収へのリスクを挙げています(大和総研、2025年3月3日)。
サツドラホールディングスのMBOでは、TOB価格1株1,260円で買付けが成立し、創業家は36%の株式を保有したまま経営に残りました。オリコンのMBOも1株1,370円のTOBが成立し、上場廃止に至っています。少数株主にはプレミアム付きの現金化機会を、経営陣には非公開での中長期改革の裁量を、それぞれ提供する構図が共通していると考えられます。
実務への示唆
MBOは東証プライムの大企業だけの手法ではありません。経営陣が自社株を買い取って会社を引き継ぐという意味では、後継者不在に悩む非上場の中小企業にとっても、MBOや役員・社員が担うEBOは事業承継の選択肢の一つになり得ます。
中小企業でMBOを検討する場合は、買い取り資金の調達手段(金融機関からの借入や公的機関の活用)を早めに整理する必要があります。あわせて、株価評価の妥当性を第三者の視点で確認する体制も論点になると考えられます。上場企業の非公開化と同様、経営の自由度を取るか、既存株主への説明責任をどう果たすかという整理が欠かせません。
まとめ
- 2024年の上場廃止は94社と過去最多で、うちMBOは21社。2025年以降もペースは続いていると考えられます
- 背景には東証の資本コスト要請とPBR1倍割れ、上場維持コストの増加、アクティビスト対応など複数の要因が重なっています
- MBOは大企業に限らず、中小企業の事業承継でも活用できる選択肢の一つです

