自社株の承継対策として、従業員持株会の導入を検討する非上場企業が増えています。福利厚生としての資産形成に加え、相続財産の圧縮や安定株主づくりの手段としても注目されている仕組みです。本記事では従業員持株会の基本的な仕組みと事業承継での活用方法を解説します。
従業員持株会とは
従業員持株会とは、役員・従業員が任意で加入し、共同で自社株式を取得・保有する組織です。多くの企業で福利厚生制度として導入され、拠出額に応じて会社が奨励金を上乗せする運用が一般的です。
たとえば毎月1万円を拠出し会社が10%の奨励金を上乗せする場合、株式の購入原資は1.1万円相当になります。英語圏では従業員による自社株保有の仕組みをESOP(Employee Stock Ownership Plan)と呼ぶことがありますが、日本の持株会はと法的な仕組みが異なる制度です。
持株会の仕組み
持株会の運営には、主に次のような特徴があります。
- 組織形態:多くの持株会は民法上の組合として運営され、会社法上の法人格は持ちません
- 加入・拠出:役員・従業員が毎月一定額を拠出し、株式を共同購入します
- 奨励金:会社が拠出額の一定割合を上乗せする例が一般的で、割合は各社の持株会規程で定めます
- 議決権の扱い:個々の持分に応じた行使ではなく、理事長が一括して議決権を行使する運用が一般的です
- 退会時の扱い:退職などで退会する場合、保有株式は原則として持株会が買い取ります
事業承継における活用
オーナー経営者にとって
オーナー保有株式の一部を持株会へ移すことで、相続財産に占める自社株の割合を圧縮できます。持株会が保有する株式は少数株主分として扱われ、評価上は原則として配当還元方式が用いられます。
配当還元方式による評価額は、類似業種比準方式や純資産価額方式による評価額より低くなるケースがありますが、適用の可否は資本構成や配当実績により異なります。また、安定株主の確保や従業員のモチベーション向上も持株会制度の導入の狙いとして挙げられます。
議決権設計の注意点
普通株式のまま持株会へ移すと、議決権も株式数に応じて分散します。理事長での一括運用でも、加入者の意向や将来の脱退により経営への影響が生じる可能性は残ります。
経営権を維持しながら株式を移転したい場合、議決権を制限した種類株式を組み合わせる設計が実務ではよく検討されます。設計の選択肢については種類株式とは?事業承継・M&Aでの活用と注意点をご覧ください。
退会時の買い取り資金
持株会の運営は理事長(総務・経理部門の役員が兼務することが多い)が担います。退会時の株式買い取り原資は、持株会の積立金または会社からの追加拠出でまかなわれます。
退職者が集中する時期は買い取り資金が不足しやすいため、事前に買い取りルールや会社の支援規程を整備しておくことが実務上重要です。
株式分散リスクへの目配り
加入者が増えるにつれ株主構成は複雑化し、将来的に意思決定のたびに同意取得の手間が増える可能性がある点は留意する必要があります。なお、既に自社株が分散している場合の集約方法は分散した自社株の集約方法とは?事業承継前の少数株主対策で解説しています。
また、持株会の設計や株式評価は資本構成・規模により異なるため、導入前に税理士へ相談し試算することをお勧めします。
まとめ
- 従業員持株会は役員・従業員が共同で自社株を保有する組織で、多くは民法上の組合として運営されます
- 事業承継では、オーナー株式の一部移転による相続財産の圧縮や安定株主づくりに活用されます
- 議決権設計・退会時の買い取り資金・株式分散リスクへの対応が必要で、評価や税務は税理士への確認が欠かせません
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