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会社分割を活用した事業承継とは?スキームと注意点

会社分割を活用した事業承継とは?スキームと注意点|M&A Times

「複数の事業を営んでいる」「本業とは別に不動産を保有している」——このような会社では、後継者に会社をまるごと引き継がせることが、必ずしも適切とは限りません。事業ごとに切り分けて渡したい、承継の対象外にしたい資産を残しておきたいと考える経営者も少なくないでしょう。本記事では、会社分割を活用した事業承継の考え方と活用パターン、実務上の注意点を解説します。

会社分割で実現できること

結論として、会社分割は「事業ごとに切り分けて渡せる」承継手法です。会社分割とは、会社が営む事業の全部または一部を切り出し、既存の会社や新たに設立する会社に承継させる組織再編の手法を指します。吸収分割と新設分割の違いなど基礎的な仕組みは、会社分割とは?吸収分割・新設分割の違いと活用場面を解説で詳しく紹介しています。

事業承継の場面では、後継者候補が複数いる場合に事業ごとに承継先を分けたい、承継の対象外としたい資産を切り離しておきたい、M&Aでの売却に向けて対象事業だけを切り出したい、といった目的で活用されています。株式をそのまま引き継ぐ方法に比べ、誰に・何を渡すかを事業単位で設計できる点が特徴です。

事業承継における会社分割の活用パターン

会社分割が事業承継の場面でどのように使われるか、代表的な3つのパターンを整理します。いずれも「事業を切り分けられる」という会社分割の性質を、承継の設計に応用したものです。

パターン内容
①兄弟・親族それぞれに別事業を承継複数の事業を営む会社で、事業ごとに会社を分割し、後継者候補ごとに担当する事業を分けて承継させます。
②中核事業は後継者や買い手へ、不動産管理等は現経営者に残す中核事業を切り出して後継者やM&Aの買い手に承継させる一方、不動産管理などの事業は現経営者側の会社に残す形です。
③不採算・承継対象外の事業を分離将来性の低い事業や承継の対象としない事業をあらかじめ切り離し、中核事業の承継にリスクが及ばないようにします。

②や③のように、M&Aでの譲渡に先立って対象事業だけを切り出す手法は「カーブアウト」とも呼ばれます。切り出し方の考え方はカーブアウトとは|事業切り出しの手法で解説していますので、あわせてご確認ください。

承継における進め方の概要

本記事では事業承継として進める際のおおまかな流れに絞って紹介します。実際の手続きは会社の状況によって前後する場合があります。

  • 承継対象とする事業・資産の切り分け方針を決める
  • 分割計画または分割契約を策定する
  • 株主総会決議など社内の承認手続きを行う
  • 債権者保護手続きを実施する
  • 労働契約承継法に基づき、承継対象となる従業員への通知・協議を行う
  • 効力発生日を迎え、事業や株式の承継を完了する

このうち債権者保護手続きには一定の公告期間が必要で、全体として数ヶ月単位の準備期間を見込んでおくのが一般的です。着手が遅れるほど承継のタイミングとずれが生じやすいため、早めに専門家へ相談し逆算してスケジュールを組むことをおすすめします。

他の手法との使い分け

株式をそのまま引き継げば足りる場合、会社分割を使わずに持株会社(ホールディングス)を活用したスキームの方がシンプルに整理できることがあります。事業を切り分ける必要があるかどうかが、両者を使い分ける際の判断軸になります。詳しくは持株会社(ホールディングス)を活用した事業承継スキームをご覧ください。

一方、株式承継を軸に進める場合は、贈与税・相続税の納税猶予制度である事業承継税制の活用が中心になります。会社分割と組み合わせる際の考え方は、次の注意点でも触れます。

よくある失敗・注意点

税務上の扱いは、適格分割か非適格分割かで大きく変わります。原則として、一定の要件を満たす適格分割であれば譲渡益等への課税が繰り延べられますが、要件を満たさない非適格分割では課税関係が生じ得ます。具体的な適格要件の判定や税率は個別の状況によって異なるため、実行前に必ず税理士へ確認してください。

事業承継税制との関係にも注意が必要です。納税猶予制度は、株式の贈与や相続による承継を対象とした制度です。会社分割を組み合わせる場合、納税猶予の適用要件に影響が及ぶ可能性があるため、「使える」「使えない」を事前に断定せず、事業承継税制とは?贈与税・相続税の納税猶予の仕組みを解説もあわせて確認したうえで、専門家に個別の状況を照らして判断を仰ぐことが欠かせません。

許認可や取引先との契約は事業ごとに再確認が必要で、内容によっては再取得や相手方の同意を要する場合があります。従業員の承継についても、労働契約承継法に基づく通知・協議等の手続きが定められており、対応漏れが後のトラブルにつながりかねません。

会社分割は税務・法務・労務が複雑に絡み合う手続きです。原則として、税理士・弁護士・司法書士など複数の専門家が連携しながら進める必要があると考えておきましょう。

まとめ

  • 会社分割は事業ごとに切り分けて渡せる手法で、複数後継者への承継や非対象資産の切り離し、M&A前のカーブアウトに活用できます
  • 税務は適格・非適格で扱いが異なり、事業承継税制との関係も含めて専門家への確認を原則としてください
  • 債権者保護手続きなどが必要となるため、準備には数ヶ月単位の期間を見込んでおきましょう

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