「後継者もいないし、そろそろ店を閉めようか」——そう考える経営者は少なくありません。廃業を考えるとき、多くの人はこれを倒産と同じ意味で受け止めがちですが、統計上はまったく別のカテゴリーに分類されます。本記事では、休廃業・解散の定義と倒産との違い、そしてそこに潜むもう一つの選択肢を解説します。
休廃業・解散とは
休廃業・解散とは、東京商工リサーチ(TSR)によると「倒産(法的整理、私的整理)以外で、事業活動を停止した企業」を指す統計用語です。帝国データバンク(TDB)も同様に、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに事業を止めた状態(休廃業)、または商業登記等で解散を確認した状態(みなし解散を除く)と定義しています。
両社に共通するのは、資金繰りが行き詰まって裁判所を通じた法的整理に進む倒産とは別に、経営者自身の判断で事業をたたむケースを独立して集計している点です。廃業の手続きや費用そのものは休廃業・解散とほぼ重なりますが、統計上は「倒産に含まれない自主的な事業停止」という枠組みで扱われます。
TSRの調査では2025年の休廃業・解散は6万7,210件(前年比7.2%増)で3年連続の過去最多となりました。TDBの調査でも6万7,949件にのぼり、過去10年では2番目に多い水準です。
倒産との違い
休廃業・解散と倒産は、どちらも会社が市場から退出する点は同じでも、中身は大きく異なります。最大の違いは、資金繰りが破綻しているかどうかと、裁判所を通じた法的手続きの有無です。以下の表で整理します。
| 項目 | 休廃業・解散 | 倒産 |
|---|---|---|
| 債務の状況 | 支払い能力が残るうちに自主的に停止するケースが多い | 資金繰りが行き詰まり、債務超過・支払不能に陥っている |
| 法的手続き | 原則なし(商業登記上の解散・清算手続きのみ) | 破産・民事再生・会社更生など、裁判所を通じた法的整理 |
| 取引先・信用への影響 | 計画的な整理により、取引先への影響を抑えやすい | 売掛金の回収不能や取引の急停止など、連鎖的な影響が出やすい |
なぜ黒字でも休廃業を選ぶのか
ここで注目したいのが、休廃業・解散に至った企業の収支状況です。TSRの調査では黒字企業率が52.8%、TDBの調査でも黒字企業の割合は49.1%と、いずれも半数前後にのぼります。資金が尽きる前、会社にまだ体力が残っているうちに、自ら事業を終える経営者が一定数いるということです。
黒字のまま資金繰りが尽きて倒産する「黒字倒産」とは逆に、こちらは資産が負債を上回るうちに自ら幕を引くケースだと言えます。裏を返せば、この段階であれば清算だけでなく、会社や事業を第三者に譲り渡す選択肢もまだ十分に残っていたはずです。
経営者が今から考えたいこと
廃業を検討し始めた段階では、清算と会社売却の両方を比較検討することが実務的には有効です。具体的には、顧問税理士や取引金融機関に加え、事業承継・引継ぎ支援センターやM&A仲介会社にも無料相談し、自社に譲渡の可能性があるか確認するとよいでしょう。
あわせて、清算した場合の手取り額と、売却できた場合の想定譲渡額を数字で比べておくことも欠かせません。検討段階では資料を共有する相手を限定し、面談は社外で行うなど情報管理を徹底することも忘れないようにしましょう。
「うちは売れないだろう」という思い込みだけで清算を決めてしまうと、従業員の雇用先や取引先との関係を引き継ぐ機会も同時に失われます。判断が固まるまでは社内外への公表を控え、進め方を専門家と詰めてから動くことが望まれます。
まとめ
- 休廃業・解散は、倒産(法的整理)に含まれない自主的な事業停止を指す統計用語です。
- 2025年はTSR調べで6万7,210件、TDB調べで6万7,949件と、いずれも高水準で推移しました。
- 休廃業・解散企業のうち黒字は約5割にのぼり、資産超過のうちに会社売却を検討する余地も残っています。
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