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アクハイヤーとは?AI時代に増える人材獲得型M&A

アクハイヤーとは?AI時代に増える人材獲得型M&A|M&A Times

当サイトでは、設立から数年のAI関連企業が買収される事例を相次いで報じてきました。買収先の売上や商圏ではなく、所属する技術者やチームの獲得を主目的とするM&Aは「アクハイヤー」と呼ばれます。AI人材を自社で採用する難易度が上がるなか、中小企業やスタートアップの経営者にとっても無関係なテーマではなくなっています。

アクハイヤーをどう捉えるか

本記事ではまずアクハイヤーの定義を確認します。次に、AI人材の採用競争を背景とした増加の理由を整理したうえで、当サイトが報じてきた国内の実例を紹介します。最後に、売り手側の経営者が取るべき備えを検討する構成です。

アクハイヤーの定義

アクハイヤー(acqui-hire)とは対象企業の商品や事業ではなく所属する人材の獲得を主目的として実施するM&Aを指します。「企業の買収(acquisition)」と「人材の雇用(hire)」を組み合わせた造語です。

通常の買収は事業基盤や顧客の獲得を主眼としますが、アクハイヤーは技術者やチームの確保そのものを取引の目的に据える点が異なります。買い手の属性は事業会社から投資ファンドまで幅広く中小企業M&Aの買い手の種類によって重視する狙いも変わります。買収の成果を測る基準も売上や顧客数ではなく獲得した人材が定着し力を発揮したかどうかに置かれると考えられます。

なぜアクハイヤーが増えているのか

アクハイヤーが増えている背景には、人材市場の構造変化にあります。AI・機械学習分野の専門人材は各社が獲得を競う状態が続いており、一人ずつ選考する従来型の採用ではチームとして機能するまでに時間がかかります。

一方ですでに実績のあるチームを買収で丸ごと引き受ければ、採用にかかる期間とコストを圧縮しながら実務に投入できる人材を確保できます。こうした人材獲得を成長戦略に組み込み、M&Aを繰り返す企業も見られます(連続買収企業の成長戦略を参照)。ゼロから育てるより完成した組織を買う方が合理的だという判断の広がりが、アクハイヤー拡大の背景にあると考えられます。

日本でも広がる人材獲得型M&A

国内でも人材や技術力の獲得を狙いに挙げる買収が相次いで報じられています。以下に具体的な事例を紹介します。

①売れるネット広告社グループ、AI開発を手がけるライトを株式対価1円で完全子会社化
②ABEJA、AIガバナンスを手がけるMONO BRAINを完全子会社化(9月には吸収合併も予定)
③クリーク・アンド・リバー社、AI駆動開発のリンクテックを完全子会社化しDX支援体制の強化に活用

3件に共通するのは、設立から日が浅い企業や少人数の組織を対象にしている点です。ABEJAとMONO BRAINは開示で「知見・プロダクト・人材」の組み合わせを、クリーク・アンド・リバー社は「AI開発技術・エンジニアリソース」の活用を、売れるネット広告社グループは「AI開発力・運営ノウハウの獲得」を目的に挙げています。いずれも人材や技術力そのものを取得の狙いに含めて開示した案件であり、日本でも人材獲得を視野に入れた買収が珍しい選択ではなくなっているようです。

売り手が備えるべき実務

技術者やエンジニア組織そのものが評価の中心になる買収が増えるほど、売り手側には人材の定着を売却プロセスに組み込む備えが求められます。買収後に主要メンバーが離職すれば、期待された価値そのものが失われるためです。

具体策の一つは、キーマンに対するロックアップ条項の設計です。在籍期間や達成条件を契約段階で明確にしておく必要があります(ロックアップ・キーマン条項の実務を参照)。

もう一つは業務の属人化を解消する文書化です。特定の担当者しか把握していない開発手順や顧客対応の知見を買収前にドキュメント化しておけば、人材が入れ替わっても事業価値が維持されやすくなります。人材が価値の中心になる会社ほど、契約と文書化の両面からの準備が高い評価を引き出す土台になると考えられます。

まとめ

  • アクハイヤーは事業や商品ではなく人材そのものの獲得を目的にしたM&A
  • AI人材の採用難と、ゼロから採用するより完成したチームを買う合理性が増加の背景
  • 売り手はロックアップ条項の設計と属人化の文書化という契約と実務の両面で人材の定着を備える必要がある

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