M&Aの「リアル」を伝える経済メディア

読了目安 約4分

,

SOLIZE HD、SESのエンジョイを32億円で孫会社化 借入27億円も

SOLIZE HD、SESのエンジョイを32億円で孫会社化 借入27億円も|M&A Times

ものづくりのデジタル化を手がけるSOLIZE Holdings(東証スタンダード・5871)は2026年9月10日、連結子会社の+81株式会社がSES会社エンジョイの全株式を取得し孫会社化すると発表しました。取得価額は合計32億12百万円で、一部27億円は財務特約付きの借入で調達します。

発表の概要

エンジョイは東京都台東区のSES会社です。金融機関や公共・行政向けシステム開発の安定した取引基盤と、チーム単位で技術者を供給する体制を強みとしています。2025年10月期の売上高は27億36百万円、当期純利益は2億13百万円でした。譲渡元は個人株主2名(持株比率100%)で、相手先の意向により詳細は非開示です。

項目内容
譲渡元(売り手)個人株主2名(持株比率100%・詳細非開示)
取得対象株式会社エンジョイ(東京都台東区・SES)
取得会社+81株式会社(SOLIZE Holdingsの連結子会社)
スキーム全株式取得による孫会社化
取得株式数1,000株(議決権所有割合100%)
取得価額株式3,200百万円+アドバイザリー費用等12百万円=合計3,212百万円
資金調達一部2,700百万円を都市銀行から借入予定(財務上の特約付き・借入日2026年9月30日・期間最長10年)
契約締結日2026年9月10日
株式譲渡実行日2026年10月1日(予定)

背景

SOLIZE Holdingsは本件について、エンジョイの金融業向け開発の知見と自社の顧客基盤・人材育成ノウハウを組み合わせ、需要獲得や事業領域拡大につなげるとしています。同社は自社が2025年9月25日に発表した「中長期の成長目標」では、子会社の+81を投資や分社化を通じた新規事業開発を担う中核事業会社と位置づけており、また投資戦略として「M&A・スタートアップ投資の積極活用によりインオーガニック成長を実現」と掲げており、本件はこの方針に沿う取得と言えるでしょう。

今後の予定

エンジョイは株式譲渡実行後の2026年12月期第4四半期からSOLIZE Holdingsの連結孫会社となる予定です。連結業績への影響は算定中で、のれんの発生が見込まれますが金額や会計処理は未確定です。財務上の特約の内容も協議中で、決まり次第開示するとしています。

解説

本件は個人株主2名が全株式を譲渡した事例で、着目したいのは利益に対する取得価格の水準です。株式の取得価額3,200百万円はエンジョイの2025年10月期の当期純利益213百万円の約15.0倍、営業利益263百万円の約12.2倍にあたります。同期末の純資産1,036百万円に対しては約3.1倍で、簿価純資産との単純差額は約21.6億円です。SOLIZE Holdingsも連結上のれんが発生する見込みとしており、純資産を超える部分が金融機関向け開発の取引基盤やチーム単位の技術者供給体制といった無形の価値への対価となります。

この倍率を成約データと並べると位置が分かります。中小企業庁の成約報告(2022〜2024年度)を集計した業種別の実測倍率では、SESを含む情報通信業のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値14.3倍、四分位範囲7.8〜27.4倍でした。本件の約15.0倍はこの中央値とほぼ同じ水準です。一方で純資産規模別の実測PBRを見ると、純資産5億円超の帯の中央値は1.3倍(四分位範囲0.8〜1.9倍)で、本件の約3.1倍は上位25%の水準を上回ります。設備や在庫の少ないSES会社の価格が純資産ではなく利益を基準に形成された案件と解釈できます。

同じ約15倍を当てはめると純利益2,000万円の会社なら約3億円、5,000万円なら約7.5億円に相当します。純利益×倍率の機械計算であり個社の価格を保証するものではなく、SES会社の評価は技術者の定着や顧客との契約基盤に左右される点はSES・受託開発会社のM&A動向と売却相場で解説しています。

買い手側は取得資金3,212百万円のうち2,700百万円を借入で賄う予定で、LBOを採用している点も特徴的です。借入を組み合わせて買収資金を賄う手法はLBOとは?仕組み・流れ・リスクを解説で紹介しています。自社の利益水準がどう価格に翻訳されるかを把握したうえで準備を進める手順は会社売却の進め方完全ガイドをご参照ください。

次に読む

※本記事は2026年9月13日時点の開示情報に基づいています。最新の状況は当事会社の適時開示をご確認ください。

出典