M&Aや事業買収の資金を組み立てる際、自己資金と銀行融資だけでは足りないことがあります。そうしたとき、両者の中間に位置する資金をどう調達するかが課題になります。本記事では、この隙間を埋める手法として使われる「メザニンファイナンス」について、仕組みと活用場面を解説します。
メザニンファイナンスとは
メザニンファイナンスとは、返済の優先順位やリスクの水準が、銀行融資などのシニアローン(優先債務)と株式(エクイティ)のちょうど中間に位置する資金調達手法のことです。例えば買収総額10億円のうち、エクイティで2億円、シニアローンで6億円を調達できても、残り2億円が不足する場合があります。この2億円をメザニンで調達することで、資金計画を成立させることができます。
「メザニン(mezzanine)」はもともと建物の1階と2階の間にある「中2階」を指す英語です。返済順位がシニアとエクイティの中間にあることから、金融の世界でもこの名前が使われるようになりました。なお、負債の形を取るメザニンは「メザニンデット」、そのうち社債形式で発行されるもの(劣後債など)は「メザニン債」とも呼ばれます。
主な手法と種類
メザニンファイナンスには、負債に近い性質のものから株式に近い性質のものまで、いくつかの形態があります。代表的なものは次のとおりです。
| 手法 | 性質 | 特徴 |
|---|---|---|
| 劣後ローン | 負債 | シニアローンより返済順位が低い借入。金利はシニアより高めに設定されることが一般的です |
| 劣後債 | 負債 | 劣後ローンと同様に返済順位が低い社債。投資家に対して発行される点が異なります |
| 優先株式 | 資本 | 普通株式より配当や残余財産の分配が優先される株式。議決権を制限する設計も多く見られます |
リスクとリターンの位置づけを整理すると、次のようになります。
| 区分 | 返済順位 | 期待リターン | 担保 |
|---|---|---|---|
| シニアローン | 最優先 | 低め | あり(資産担保が一般的) |
| メザニン | シニアの次 | 中間 | 原則なし、または劣後担保 |
| エクイティ | 最劣後 | 高め(成功時のみ) | なし |
どこから調達できるか
メザニンは公募市場で広く流通するものではなく、主に相対の交渉で組成されます。代表的な調達先は次のとおりです。
- 銀行・信託銀行・地域金融機関:劣後ローン(メザニンローン)の貸し手。シニアローンとあわせて提案されることもあります
- 政府系金融機関:日本政策金融公庫の資本性ローンや、日本政策投資銀行のメザニンファイナンスなど、資本性資金の供給制度があります
- メザニン専門ファンド・投資会社:劣後ローンの貸し付けや劣後債(メザニン債)・優先株式の引き受けを専門に行います
- 証券会社経由の私募発行:劣後債や優先株式を私募形式で発行し、機関投資家などに引き受けてもらう方法です
いずれの調達先でも、担保よりも将来のキャッシュフローの確実性が重視される傾向があるため、返済・償還の原資を示す事業計画の説明力が重要になります。
実務での意味
買い手にとって
MBOやLBOなど買収資金の調達が必要な場面では、自己資金とシニアローンだけで賄えない部分をメザニンで補うことで、調達できる総額を広げられます。一方で、金利や配当の水準はシニアローンより高く設定されることが一般的なため、資金調達コスト全体は上昇します。買収後のキャッシュフロー計画において、メザニンの返済負担をどこまで織り込めるかが検討のポイントになります。
売り手にとって
売り手が直接メザニンを調達するわけではありませんが、買い手の資金調達力が広がることは、買い手候補の裾野が広がることにつながります。買収価格の交渉においても、買い手がどのような資金調達構造を組めるかは、提示可能な金額に影響します。売却を検討する経営者にとっては、買い手側の資金調達事情も交渉の背景として理解しておくと役立ちます。なお、買収資金の設計はネットデットや企業価値評価の水準とあわせて検討されるのが一般的です。
まとめ
- メザニンファイナンスは、シニアローンとエクイティの中間に位置する資金調達手法です
- 劣後ローン・劣後債(メザニン債)・優先株式など、負債寄りから資本寄りまで複数の形態があります
- 調達余力を広げられる一方、コストはシニアローンより高くなる点に注意が必要です

