M&Aの「リアル」を伝える経済メディア

読了目安 約4分

EBITDAとは?計算式とM&Aで使われる理由をわかりやすく解説

M&Aや資金調達の場面で「EBITDA」という言葉を耳にする機会が増えています。財務指標のなかでもとくに企業価値評価の文脈で頻繁に登場しますが、なぜこれほど重視されるのでしょうか。本記事では、EBITDAの定義・計算式から、M&Aで使われる理由・実務上の注意点まで、わかりやすく解説します。

EBITDAとは

EBITDAとは、税引前・利払い前・償却前の利益を指す財務指標です。読み方は「イービットディーエー」または「イービットダー」と呼ばれます。英語の正式名称は Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization(利息・税金・有形固定資産減価償却・無形固定資産償却控除前利益)の頭文字を並べたものです。

実務では次の簡便な計算式がよく使われます。

計算式(簡便法)
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費(のれん償却費を含む場合もあり)

なお、厳密な定義は財務諸表の体系や会計基準(日本基準・IFRS等)によって異なるため、実際の交渉や分析では対象会社のEBITDAをどう定義するか確認することが大切です。

M&AでEBITDAが使われる理由

EBITDAがM&Aの現場で好まれる背景には、次の二つの特性があります。

一つ目は、国や会計基準の違いを超えて収益力を比較できる点です。金利水準は各国・各社の借入条件によって異なり、法人税率も国ごとに差があります。また、減価償却の方法(定額法・定率法など)も企業が選択できます。これらの影響を除いた指標にすることで、異なる環境にある企業同士の「稼ぐ力」を横並びに比べやすくなります。

二つ目は、設備投資の影響を平準化できる点です。設備を多く持つ企業は減価償却費が大きく、会計上の利益が圧縮されます。EBITDAはその償却費を加え戻すため、設備の多寡にかかわらずキャッシュを生み出す基礎的な力を測る指標に近づきます。

EV/EBITDA倍率とは

M&Aの企業価値評価(バリュエーション)では、EBITDAをもとにした「EV/EBITDA倍率」がよく用いられます。EVはEnterprise Value(企業価値)の略で、株式時価総額に純有利子負債を加えた金額です。

指標意味
EV(企業価値)株式時価総額 + 有利子負債 - 現預金
EV/EBITDA倍率EV ÷ EBITDA

EV/EBITDA倍率は「企業価値がEBITDAの何年分か」を示し、簡易的な投資回収年数の目安として使われます。倍率の水準は業種・企業規模・市況・成長性によって大きく変動するため、特定の数値を「適正水準」と断言することは避けるべきです。同業他社との比較(デューデリジェンスを経た精査)や類似取引事例との照合を組み合わせて判断するのが実務の基本です。

実務でのEBITDAの意味

買い手にとって

買い手はEBITDAを使って、買収後に期待できるキャッシュ創出力を大まかに把握します。EV/EBITDA倍率を同業他社と比べることで、対象会社の価格が割高か割安かを初期スクリーニングする際の参考になります。また、複数の買収候補を横断的に比較する際にも、EBITDAは共通の物差しとして機能します。

売り手にとって

売り手の立場では、自社のEBITDAを正確に把握・説明することが交渉上の基本です。とくに、一時的な特別費用や経営者個人への過大報酬など、事業の正常な収益力に影響を与える項目を整理した「Adjusted EBITDA(調整後EBITDA)」を提示することで、本来の収益力をより適切に伝えられます。

注意点:EBITDAは万能ではない

EBITDAには次のような限界もあります。実務では補完指標と組み合わせた分析が欠かせません。

  • 運転資本の変動を反映しない:売掛金や在庫が増加しても、EBITDAには現れません。キャッシュフローとの乖離が生じることがあります。
  • 設備投資(CAPEX)を考慮しない:工場や設備の更新に多額のコストが必要な事業では、EBITDAが高くても実際のキャッシュ残余は少ない場合があります。
  • 定義が統一されていない:会社や交渉相手によって含める項目が異なるため、数値を比較する際は定義を確認する必要があります。

まとめ

  • EBITDAは「営業利益+減価償却費」で求められる、税・金利・償却の影響を除いた収益力の指標です。
  • M&Aでは国や会計基準の差を排して企業を比較できるため、EV/EBITDA倍率による企業価値評価に広く使われます。
  • 運転資本やCAPEXを反映しない限界があるため、フリーキャッシュフローなどの指標と組み合わせて活用することが重要です。

M&Aの検討を進める際は、EBITDAだけでなくのれん(グッドウィル)デューデリジェンスなど関連する概念も合わせて理解しておくと、交渉や意思決定をスムーズに進めることができます。