望まない相手から買収の提案を受けたとき、対象会社が頼る先の一つが友好的な第三者です。この第三者は「ホワイトナイト」と呼ばれ、敵対的買収に対抗する代表的な選択肢として知られています。本記事ではホワイトナイトの定義、典型的な手法、当事者それぞれにとっての意味を解説します。
ホワイトナイトとは
ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた会社に対し、経営陣が友好的と判断する第三者が代わりに買収したり資本参加したりして支援することです。対象会社の経営陣が望まない買収者(敵対的買収者)による支配を避けるため、より条件の良い、あるいは経営方針を尊重してくれる相手を迎え入れる形で使われます。英語の「white knight(白馬の騎士)」に由来し、窮地の相手を救う存在という意味合いを持つ表現です。
例えば、発行済株式の30%を敵対的買収者が公開買付け(TOB)で取得しようとしている会社が、友好的な企業に対して自社株の過半数相当を引き受けてもらう提案をした場合、この友好的企業がホワイトナイトにあたります。
典型的な手法と類似概念
ホワイトナイトが対象会社を支援する方法はいくつかあり、状況に応じて組み合わせて使われます。主なものを整理します。
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| 対抗TOB | ホワイトナイトが敵対的買収者より有利な条件でTOBを実施し、株主に選択肢を示す |
| 第三者割当増資 | ホワイトナイトに新株を引き受けてもらい、既存の議決権比率を変化させて買収の成立を難しくする |
| 株式交換 | 対象会社をホワイトナイトの完全子会社とし、支配関係を確定させる |
| 業務・資本提携 | 一定の出資と提携契約により、経営の独立性を保ちながら関係を強化する |
似た用語に「ホワイトスクワイア(white squire)」があります。ホワイトナイトが会社全体の買収や支配権の取得まで踏み込むのに対し、ホワイトスクワイアは友好的な第三者が一部の株式を引き受けるにとどめ、支配権までは取得しない点が異なります。議決権の一定割合を友好株主として確保し、敵対的買収者の持株比率を相対的に下げる目的で使われます。
日本での代表例
日本でも、ホワイトナイトが登場した敵対的買収の事例がいくつか知られています。いずれも当時広く報道された公知の案件です。
- オリジン東秀(2006年):ディスカウントストア大手のドン・キホーテが弁当・惣菜チェーンのオリジン東秀へ敵対的TOBを実施したのに対し、オリジン東秀側はイオンをホワイトナイトとして招き、イオンがより有利な条件で対抗TOBを行いました。結果としてオリジン東秀はイオンの傘下に入り、日本で対抗TOBが成立した代表例とされています
- 北越製紙(2006年):製紙業界最大手の王子製紙が同業の北越製紙(現・北越コーポレーション)へ敵対的TOBを仕掛けたのに対し、北越製紙は三菱商事を引受先とする第三者割当増資を実施。三菱商事が筆頭株主となったことなどにより、王子製紙のTOBは不成立に終わりました。買収までは踏み込まず出資で支援するホワイトスクワイア型の対応例としても紹介されます
いずれの事例でも、株主にとってはより高い価格や条件が提示される契機となった一方、経営陣の判断の合理性が市場から厳しく問われました。
実務での意味
対象会社(買収される側)にとって
対象会社にとってホワイトナイトは、望まない相手による支配を避け、事業方針や従業員の雇用を維持しやすい相手を選べる手段です。一方で、経営陣がホワイトナイトを選ぶ判断は、必ずしも株主全体の利益と一致するとは限りません。経営陣の保身のためだけに友好的な相手を選んだと見られれば、株主や裁判所から取締役の善管注意義務違反を問われるおそれがあるため、選定の合理性を説明できることが原則として求められます。
敵対的買収者にとって
敵対的買収者にとって、ホワイトナイトの登場は買収計画の実現を難しくする要因です。対抗TOBが行われれば、より高い価格を提示しない限り株主の支持を得にくくなり、結果として当初想定していたより買収コストが上がる、あるいは買収自体を断念する展開につながることがあります。
株主にとって
株主にとっては、敵対的買収者とホワイトナイトが競合することで、より有利な条件(高い買付価格など)を引き出せる可能性があります。ただし、経営陣が提示する相手が本当に企業価値を高めるのか、単に現経営陣を守るための選択なのかは、株主自身が見極める必要がある論点です。
まとめ
- ホワイトナイトとは、敵対的買収を受けた会社を友好的な第三者が買収・支援することです。
- 対抗TOB・第三者割当増資・株式交換など複数の手法があり、一部出資にとどめるホワイトスクワイアとは区別されます。
- 株主にとって有利に働く場合がある一方、経営陣の保身との線引きが常に論点になります。
次に読む
- TOB — ホワイトナイトが対抗手段として用いる公開買付けの仕組みを解説しています。
- 株式交換 — ホワイトナイトが対象会社を完全子会社化する際に使われる手法を解説しています。
- M&Aの流れ完全ガイド — 買収防衛策が登場する背景を含め、M&A全体の流れを一から解説しています。

