「M&Aの仲介会社から頻繁に電話やDMが来て困っている」「御社を買いたい会社があると言われたが、本当だろうか」——こうした声を持つ経営者は少なくありません。本記事では、なぜこうした営業電話が来るのかという構造と、実際に電話を受けたときにどう対応すればよいかを整理します。
なぜ営業電話が来るのか
近年、M&A仲介業界は新規参入が相次ぎ、競争が激しくなっています。多くの仲介会社は成約時の成功報酬を主な収益源とするビジネスモデルを採っており、仲介契約を獲得すること自体が事業の生命線です。そのため、企業データベースや業歴・決算公告などの公開情報をもとに、幅広い企業へ電話・DMで営業をかけることが行われています。
営業電話が来ること自体は、この業界の構造を踏まえればごく自然な現象と考えられます。慌てて拒絶したり不安になったりする必要はありません。しかしながら、残念ながら悪質なM&Aの仲介会社も存在するため、営業電話の対応方法には注意が必要です。
「買いたい会社がいます」型トークの見方
営業トークの中でも特に判断に迷うのが、「御社を買いたいと言っている会社がある」という切り出し方です。中小企業庁が2024年8月に改訂した中小M&Aガイドライン第3版では、仲介者・FAが行う広告・営業に関する規律が新たに明記されました。
同ガイドラインは、譲り受け(譲り渡し)の意向が無い企業やその意向を確認していない企業、あるいは実際には存在しない企業について、意向があると偽ったり誤認させたりする広告・営業を明確な禁止事項としています。あわせて、仲介者・FAの名称や勧誘目的を告げずに行う営業、意思決定に必要な時間を与えず即時の判断を迫る営業も禁止事項に挙げられています(中小M&Aガイドラインとは?第3版の要点)。
つまり「買いたい会社がいる」というトークは事実であることも当然ありますが、根拠を確認する姿勢が必要だと言えます。
電話を受けたときの対応
悪質なM&A業者の被害を防ぐための確認事項を整理します。
- 社名・担当者の氏名・勧誘目的を確認する:ガイドラインでも、仲介者・FAの名称や勧誘目的を告げずに行う広告・営業は禁止事項とされています。名乗らない、はぐらかす場合は警戒材料になります。
- その場で面談や契約を約束しない:意思決定に必要な時間を与えず即時の判断を迫る営業も、同ガイドラインで禁止されています。「検討して折り返します」で構いません。
- 買い手の実在性・根拠を尋ねる:社名までは明かせなくても、業種・エリア・希望条件程度は通常説明できるはずです。曖昧なまま面談だけ急ぐ場合は注意が必要です。
- 登録支援機関かどうかを確認する:中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」データベース(ma-shienkikan.go.jp)で、社名から登録の有無を検索できます。
- 不要なら明確に断り、記録を残す:ガイドラインでは、営業先が停止を求めた場合、仲介者・FAはただちに営業を停止しなければならないとされています。日時・担当者名・やり取りの内容を簡単にメモしておくと、後日の対応に役立ちます。
実務への示唆
今は売却を考えていなくても、電話が来ること自体は自社に一定の市場性があるサインとして冷静に受け止めてよい面もあります。慌てて動く必要はありませんが、実際に売却を検討し始めたタイミングでは、受け身で電話を受けた仲介会社にそのまま依頼するのではなく、複数の候補を自分で比較して選ぶことが望ましいと考えられます。
初回相談で何を準備し何を聞かれるかを事前に把握しておくと(M&A仲介への初回相談で準備するもの・聞かれること)、電話口での判断に振り回されにくくなります。
まとめ
- M&A仲介からの営業電話は、業界の競争構造から一般的に発生するものと考えられます
- 「買いたい会社がいる」型トークは、ガイドラインで禁止される虚偽営業の可能性もあるため根拠確認が必要です
- 社名・根拠の確認、即答回避、登録の有無確認、明確な断りと記録が実務的な対応策になります
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出典: 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月)/中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録機関データベース

