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M&A詐欺とは?悪質な買い手の手口と対策

M&A詐欺とは?悪質な買い手の手口と対策|M&A Times

会社を売りたいと考え始めた経営者にとって、買い手が信頼できる相手かどうかは何よりも気になるところです。M&Aの件数が増えるにつれ、買収後に資金だけを引き出して連絡が取れなくなる買い手や、約束した経営者保証(会社の借入に対する経営者個人の保証)の解除を履行しない買い手といった問題も指摘されるようになりました。本記事では、こうした「M&A詐欺」と呼ばれる悪質な事例に共通する手口を一般化して整理し、中小企業庁の中小M&Aガイドラインに基づいた具体的な防御策を解説します。

なぜ悪質な買い手・仲介の問題が注目されるのか

中小企業のM&Aは、後継者不在に悩む企業の増加を背景に、件数が伸び続けています。市場が広がる過程では、真摯に経営を引き継ぐ意思のある買い手だけでなく、事業を継続する資力や実態を伴わないまま案件を追う買い手も入り込みやすくなります。仲介会社についても、成約を急ぐあまり依頼者の利益より自社の手数料を優先してしまう構造的なリスクが指摘されています。

中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)は、こうした「不適切な譲り受け側」を中小M&Aの市場から排除していく必要性を明記し、仲介者・FA(フィナンシャル・アドバイザー)に対して、譲り受け側の財務状況や事業実態を調査し、依頼者に説明することを求めています。悪質な事例は例外的なものですが、構造を知っておくことで正しく身構えることができます。

実際に起きた事件の経緯と教訓は、ルシアン事件とは?悪質M&Aの実例と対策で詳しく解説しています。

買い手側に見られる典型的な手口(一般論)

個別の事件・企業名ではなく、一般に指摘されている構造的な手口として、以下のようなパターンがあります。

  • 買収後の資金流出型:クロージング(決済・引き渡し)後、会社の現預金を短期間で流出させ、その後に連絡が取れなくなる買い手です。事業の継続よりも、会社に残る資産の取得そのものが目的だったと考えられるケースです。
  • 経営者保証の解除未履行型:譲渡交渉の段階では経営者保証の解除を約束しながら、クロージング後に金融機関への対応を先送りし、結局解除に至らないケースです。解除は最終的に金融機関の判断であるため、買い手の対応が不十分だと前経営者の保証だけが残り続けるおそれがあります。
  • 資力不明の多数買収型:短期間に多数の会社を買い集める買い手で、個々の譲渡対価を実際に支払う資力があるか、事業を継続して運営する体制があるかが不透明なケースです。

仲介会社側に見られる典型的な手口

買い手だけでなく、仲介会社側の不適切な行為が問題になることもあります。

  • 着手金・中間金目的の引き延ばし型:成約の可能性が低いと分かっていながら、着手金や中間金の獲得を目的に、案件を長期間抱え込むケースです。手数料の種類や発生条件を契約前に確認していないと、成果につながらないまま費用だけが発生します。
  • 両手仲介の利益相反型:仲介者は譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約し、双方から手数料を受け取る形態が一般的です。この形態自体は直ちに問題とはなりませんが、一方当事者(特にリピーターとなり得る買い手)の利益を優先して、譲渡価額を不当に低く誘導するなどの利益相反行為に発展するリスクが指摘されています。

実務への示唆:経営者が今できる防御策

買い手の実態・資力を確認する

買い手候補の商業登記簿・決算公告・税務申告書などから、財務状況と事業実態を確認することが基本です。中小M&Aガイドラインでも、仲介者・FAに対して契約締結前の調査と依頼者への説明を求めており、依頼者側からも調査の概要について説明を受け、必要に応じて追加確認を依頼することが望ましいとされます。

経営者保証の解除をクロージング条件にする

経営者保証の解除は買い手・金融機関の対応次第で確定的にならないことがあるため、最終契約書上、解除に向けた買い手の対応をクロージング条件や表明保証の対象として明記しておくことが有効です。表明保証を活用し、解除に向けた協力義務を契約に落とし込むことで、口頭の約束だけに頼らずに済みます。

譲渡代金の決済を確認し、セカンドオピニオンを活用する

クロージング当日は、譲渡対価が確実に入金されたことを確認してから引き渡し手続きを進めます。また、契約内容や仲介者からの助言に疑問がある場合は、契約とは別の士業等専門家や公的機関に意見を求めるセカンドオピニオンが有効です。国が運営するM&A支援機関登録制度に登録された仲介会社・FAかどうかも、信頼性を判断する材料の一つになります。

典型的な手口主な対策
買収後の資金流出・音信不通買い手の財務状況・事業実態の事前調査、決済の確認
経営者保証の解除未履行クロージング条件・表明保証への明記、金融機関への事前相談
資力不明の多数買収登記簿・決算公告・過去のM&A実績の確認
着手金・中間金目的の引き延ばし手数料体系の事前確認、支援機関登録制度の確認
両手仲介の利益相反FA起用の検討、利益相反に関する説明の要求、セカンドオピニオン
典型的な手口と、実務で取りうる主な対策の対応関係

まとめ

  • 悪質な買い手には、買収後の資金流出型、経営者保証の解除未履行型、資力不明の多数買収型などのパターンが指摘されています。
  • 仲介会社側にも、着手金目的の引き延ばしや両手仲介の利益相反といったリスクがあり、契約前の確認が重要です。
  • 買い手の実態確認、経営者保証解除のクロージング条件化、譲渡代金の決済確認、セカンドオピニオンの活用が実務的な防御策になります。

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