「自社に後継者がいない」——そう感じている経営者は、実は珍しくありません。後継者が決まっていない企業は全国にどれくらいあるのか、最新の統計から確認します。業種・地域・経営者年齢による違いと、不在率が下がっている理由まで見ていきます。
後継者不在率とは何か
後継者不在率とは、信用調査会社が保有する企業データをもとに算出する指標で、社長の後継者が「いない」または「未定」の企業の割合を示します。数字が高いほど、経営者の引退や不測の事態が起きたときに事業を引き継ぐ担い手が定まっていない企業が多いことを意味します。自社の業種・地域・年齢の不在率を知ることは、後継者問題を自分ごととして捉え直すきっかけになります。
全国の後継者不在率は50.1%、7年連続で改善
帝国データバンクが2025年11月に発表した「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、全国約27万社を対象にした2025年の後継者不在率は50.1%でした。前年から2.0ポイント低下し、7年連続で前年を下回っています。過去最高だった2017年(66.5%)と比べると16.4ポイントの大幅な改善です。
ただし、大企業の不在率が24.9%にとどまる一方、中小企業は51.2%、小規模企業は57.3%と、規模が小さいほど不在率が高く改善も遅れています。背景には、事業承継・引継ぎ支援センターなど官民の相談窓口や支援メニューの拡充があるとされています。
業種・地域・年代で異なる傾向
2025年は調査開始以来初めて、全8業種で不在率が60%を下回りました。最も高いのは建設業、最も低いのは製造業です。
| 業種 | 後継者不在率(2025年) |
|---|---|
| 建設業 | 57.3% |
| 小売業 | 55.2% |
| サービス業 | 52.9% |
| 不動産業 | 51.1% |
| 卸売業 | 46.8% |
| 運輸・通信業 | 45.7% |
| 製造業 | 42.4% |
| その他 | 38.5% |
地域別では、秋田県(73.7%)が全都道府県で唯一70%を超え、三重県(33.9%)は5年連続の全国最低となりました。
| 順位 | 都道府県 | 後継者不在率(2025年) |
|---|---|---|
| 1(最高) | 秋田県 | 73.7% |
| 2 | 島根県 | 64.2% |
| 3 | 北海道 | 63.6% |
| 45 | 千葉県 | 40.4% |
| 46 | 鹿児島県 | 37.6% |
| 47(最低) | 三重県 | 33.9% |
経営者の年代別では、30代未満が83.2%と最も高く、事業承継が視野に入る50代でも58.3%あります。80代以上でも22.2%は後継者を決めていません。前年に比べいずれの年代も改善しましたが、70代・80代以上は後継者計画を「中止・取りやめ」た割合が他の年代より高く、注意が必要です。
不在率「改善」の中身
不在率の改善は、誰が後継者になるかという中身の変化を伴っています。同調査の2025年速報値では、血縁によらない役員・社員を登用する「内部昇格」が36.1%となり、これまで最多だった「同族承継」(32.3%)を初めて上回りました。従業員承継(EBO)のように社内人材へ経営を託す動きが広がっている表れです。後継者候補の属性でも「非同族」が41.0%で4年連続の最多となり、初めて4割を超えました。一方でM&Aによる承継(買収・出向ほか)は20.6%と、前年実績の19.2%から上昇しました。
不在率全体は改善しても、後継者が決まらないまま代表者に不測の事態が生じれば倒産に至るケースは残っています。「後継者難」倒産は2026年上半期に過去最多の264件(前年同期比14.7%増、東京商工リサーチ調べ)を記録しました。不在率の改善は全体傾向であり、個々の企業のリスクが消えたわけではありません。
実務への示唆
統計上の改善に安心せず、自社の状況を数字と照らして点検することが実務上の第一歩になります。
- 自社の立ち位置を確認する:業種・地域・経営者年齢の不在率と自社を照らし合わせ、平均より高ければ準備の優先度を上げます。
- 後継者候補を書面で棚卸しする:候補の有無・関係(親族/社内人材/未定)を1枚の社内文書にまとめ、年1回見直します。
- 相談窓口を年に一度は使う:顧問税理士・取引金融機関・事業承継・引継ぎ支援センターに、進捗の有無にかかわらず年1回相談します。代表者が70代以上なら、体調変化で計画が急に止まるリスクが高いため先延ばしにしないことが大切です。
まとめ
- 全国の後継者不在率は2025年時点で50.1%、7年連続で改善している(帝国データバンク調べ)
- 業種では建設業(57.3%)、地域では秋田県(73.7%)が最も高く、経営者が30代未満の企業では83.2%が後継者未定
- 改善の中身は「脱ファミリー化」の進展であり、後継者難による倒産は依然として過去最多水準が続いている
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