M&Aの交渉が基本合意書(LOI)の締結を経て進み、デューデリジェンス(DD、買収監査)が完了すると、いよいよ取引を確定させる最終段階に入ります。この最後の関門で締結されるのが最終契約書(DA)です。基本合意書と何が違うのか、疑問に思う経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では最終契約書の意味、基本合意書との違い、主要条項をわかりやすく解説します。
最終契約書(DA)とは
最終契約書(Definitive Agreement、DA)とは、M&Aの取引条件を最終的に確定し、当事者双方に法的拘束力を持たせる契約書のことです。株式譲渡の場合は「株式譲渡契約書(SPA、Stock Purchase Agreement)」、事業譲渡の場合は「事業譲渡契約書」と呼ばれることもあり、これらは最終契約書の一種と位置づけられます。例えば譲渡対価5億円の株式譲渡であれば、DAには支払時期・支払方法・表明保証・補償条項などが具体的に盛り込まれ、クロージング(決済・引き渡し)までの当事者の権利義務が細かく定められます。
LOIとの違い(法的拘束力が最大のポイント)
最終契約書と基本合意書(LOI)の最大の違いは、法的拘束力の範囲です。LOIは独占交渉権や秘密保持など一部条項を除き、多くの部分が紳士協定にとどまります。一方、最終契約書は原則として契約全体が法的拘束力を持ち、違反すれば損害賠償請求の対象になり得ます。
| 項目 | 基本合意書(LOI) | 最終契約書(DA) |
|---|---|---|
| 締結タイミング | トップ面談後・DD開始前 | DD完了後・クロージング直前 |
| 法的拘束力 | 一部条項のみ(独占交渉権・秘密保持等) | 原則として契約全体 |
| 主な内容 | 譲渡対価の目安・スキーム・スケジュール | 確定対価・表明保証・補償・競業避止等 |
| 役割 | DDに進むための土台づくり | 取引を完結させる最終合意 |
このように、LOIが「これから条件を詰めていく合意」であるのに対し、DAは「条件を確定させ実行する契約」という違いがあります。
最終契約書の主要条項
最終契約書には、取引の実行と将来のリスク分担に関わる条項が幅広く盛り込まれます。主な条項は次のとおりです。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 譲渡対価と支払条件 | 金額・支払方法・価格調整の定め |
| 表明保証 | 開示情報が真実・正確であることの表明 |
| 前提条件 | クロージング(決済実行)の条件となる事項 |
| 補償 | 契約違反があった場合の金銭的補填 |
| 競業避止 | 売り手による同業での再参入の制限 |
実務での意味
買い手にとって
買い手にとって最終契約書は、DDで判明したリスクを条件面に反映させる最後の機会です。表明保証や補償条項を丁寧に設計することで、契約後に問題が発覚した場合の損失を一定範囲でカバーできます。
売り手にとって
売り手にとっては、補償や競業避止の範囲が自身の将来の事業活動やリスク負担に直結するため、内容を十分に理解した上で合意することが重要です。専門家の助言を受けながら条項を確認する姿勢が欠かせません。
まとめ
- 最終契約書(DA)は取引条件を最終確定し、原則として契約全体に法的拘束力を持たせる契約書です
- 基本合意書(LOI)とは異なり、多くの条項が法的拘束力を持つ点が最大の違いです
- 譲渡対価・表明保証・前提条件・補償・競業避止など、取引実行とリスク分担に関わる条項が中心となります
次に読む
- 基本合意書(LOI)とは: 最終契約に至る前段階の合意内容と役割を理解する
- 表明保証とは: DAの中核条項である表明保証の仕組みとリスクを深掘りする
- M&Aの流れ完全ガイド: 検討から成約までの全体プロセスを俯瞰する

