M&Aで基本合意書(LOI)を締結すると、買い手は本格的なデューデリジェンス(DD)に着手します。多額の費用と時間をかけて調査を進める中、売り手が同時に他の候補ともやりとりを続けていたらどうなるでしょうか。本記事では、基本合意時に設定される独占交渉権について、位置づけ・期間・違反時のリスクを解説します。
独占交渉権とは
独占交渉権とは、一定期間、売り手が買い手以外の第三者と交渉や契約締結をしないことを約束する権利(義務)です。英語では「エクスクルーシビティ(Exclusivity)」と呼ばれ、海外のM&A契約書でも同様の条項が置かれます。
例えば「基本合意締結日から3カ月間」のように具体的な期間を定め、その間は売り手が新たな買収候補との接触や、既存候補への情報開示を控える、という形で契約書に明記されるのが一般的です。
基本合意での位置づけと目的
基本合意書は価格などの主要条件について法的拘束力を持たせないことが多い一方、独占交渉権の条項は法的拘束力を持たせるのが一般的です。以下に要点を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規定される書面 | 基本合意書(LOI)内の条項として規定されるのが通例 |
| 法的拘束力 | 原則として拘束力あり(主要条件は拘束力なしとすることが多い) |
| 目的 | 買い手が投じるデューデリジェンス(DD)費用(専門家報酬等)の保護 |
| 一般的な期間 | 3〜6カ月程度とされます(案件の規模・複雑さにより変動) |
買い手は財務・法務・事業性など多岐にわたるDDに、専門家報酬を含む相応のコストを投じます。独占交渉権は、その投資が売り手の「他候補との並行交渉」によって無駄になるリスクを防ぐための仕組みといえます。
実務での意味
買い手にとって
買い手にとって独占交渉権は、DD費用や交渉労力を投じる前提となる安心材料です。この期間があることで、腰を据えてDDを進め、条件交渉や最終契約書(DA)の締結に向けた準備に集中できます。
売り手にとって
売り手にとっては、独占交渉権の期間中は他の候補との比較検討の機会を失う点に注意が必要です。期間が長すぎると、より良い条件を提示する候補が現れても交渉できず、結果として不利な条件を受け入れざるを得なくなることがあります。期間の長さは、案件の状況を踏まえて慎重に設定することが望まれます。
また、独占交渉権に違反した場合(期間中に他の候補と交渉・契約した場合など)は、契約書の定めに基づき損害賠償を請求されるリスクがあります。買い手が負担したDD費用相当額が損害として想定されることが一般的です。
まとめ
- 独占交渉権とは、一定期間他の候補と交渉しない義務で、基本合意書に法的拘束力を持たせて規定するのが一般的
- 目的は買い手が投じるDD費用の保護で、期間は3〜6カ月程度とされるが案件により変動する
- 売り手は期間の長さに注意が必要。長すぎると他候補との比較機会を失い、違反時は損害賠償リスクもある
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