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工務店・リフォーム会社のM&A動向と売却相場

工務店・リフォーム会社のM&A動向と売却のポイント|M&A Times

「後継者がいない」「若手の職人が採用できない」――工務店やリフォーム会社を経営されている方なら、一度は感じたことがある悩みではないでしょうか。新築需要が細る一方でリフォーム市場は底堅く、業界の主戦場は静かに移り変わっています。この変化のなかで、M&Aは廃業を避けながら事業と雇用を残す現実的な選択肢になっています。

業界の構造とM&Aが起こる背景

工務店・リフォーム業は、現場を担う職人の技術に支えられる労働集約型の産業です。熟練職人の高齢化が進む一方、若手の採用は年々難しくなり、施工体制の維持そのものが経営課題になっています。経営者自身の高齢化も重なり、親族に継ぐ意思のある後継者がいないケースも目立ちます。取引先との信頼関係や建設業許可といった無形の資産は、廃業すれば一瞬で失われてしまいます。

加えて新設住宅市場の縮小により、新築中心の工務店ほど受注減の打撃を受けやすくなっています。既存住宅の修繕・リフォームへ軸足を移せるかどうかが、生き残りの分かれ目になりつつあります。

最近の動向

国土交通省の建築着工統計調査報告によると、2025年の新設住宅着工戸数は74万667戸で、前年比6.5%減と3年連続の減少でした。持家は20万1,285戸(同7.7%減)と特に落ち込んでいます。新築受注に依存したままの工務店には、売上の先細りが避けられない水準です。

帝国データバンクの調査(2025年11月公表)によると、建設業の後継者不在率は57.3%で、全業種平均の50.1%を上回りました。住宅建築などの「職別工事」に絞ると61.3%とさらに高く、規模の小さい工務店ほど後継者難が深刻だとわかります。親族内承継が難しい以上、第三者への譲渡は現実的な選択肢です。

東京商工リサーチによると、2025年の建設業倒産は2,014件(前年比4.6%増)で、2013年以来12年ぶりに2,000件を超えました。職別工事業の倒産814件が総合工事業の774件を2000年以降で初めて上回り、現場の担い手不足が経営体力を直接奪っている実態がうかがえます。体力を失う前に譲渡先を探せるかどうかが分かれ目です。

一方でリフォーム市場は底堅く推移しています。矢野経済研究所の調査(2025年8月公表)によると、2024年度の住宅リフォーム市場規模は7兆3,470億円で前年比0.5%減、2025年度も7.3兆円程度と横ばい圏を予測しています。工事単価の上昇が市場規模を下支えしており、リフォーム機能を持つ会社の価値は相対的に高まっています。

こうした統計を背景に、M&Aの構図も鮮明です。買い手の中心は、職人と顧客基盤ごと引き継ぐ第三者承継型の譲渡と、ハウスメーカーやパワービルダーによる地場工務店の取り込みです。加えて、不動産管理会社など異業種からリフォーム事業に参入する動きも増えています。売上数千万〜数億円規模の会社でも、施工体制と顧客基盤さえ整っていれば買い手が見つかりやすい市場です。

実例:不動産管理システムを手がけるスマサポは2026年7月、岩谷産業とその100%子会社・岩谷設備システムが「イワタニハウス」ブランドで営む戸建住宅のアフターメンテナンス・リフォーム事業の一部を譲り受けると発表しました。事業譲受日は9月1日、譲受価格は非公表です。自社のデジタル基盤に施工・メンテナンスのノウハウを組み合わせ、不動産管理会社向けサービスを強化する狙いで、異業種の生活インフラ企業が抱えていたリフォーム機能を住宅関連プラットフォーマーが取り込んだ事例です(スマサポ、岩谷産業のイワタニハウス事業を譲受)。

この業界のM&Aの特徴

工務店・リフォーム会社のM&Aで評価されやすいのは、施工を担える職人・協力会社網、既存顧客の名簿、そして建設業許可です。特に長年の取引先から続くリフォーム受注は、安定したストック収益として高く評価されます。典型的なスキームは、会社ごと引き継ぐ株式譲渡と、特定の事業だけを切り出す事業譲渡の2つです。買い手が特定エリアの施工体制だけを求める場合は、事業譲渡が選ばれやすい傾向にあります。

建設業許可の扱いは、実務上とくに重要な論点です。2020年10月に施行された改正建設業法により事業承継等の事前認可制度が新設され、あらかじめ認可を受ければ事業譲渡や会社分割でも許可を空白期間なく承継できるようになりました。それ以前は許可を新規に取り直す必要があり、その間の空白が実務上の障害でした。制度を正しく使えば、M&Aによる許可の承継は決して難しくありません。

売り手・買い手それぞれの視点

売り手の視点

売却によって、廃業では守れない従業員の雇用と取引先との関係を維持できます。譲渡対価は引退後の生活資金や新たな挑戦の元手になり、個人保証や担保の解除交渉も進めやすくなります。想定レンジは業種別の売却相場データが参考になります。

買い手の視点

買い手にとっては、採用の難しい職人と施工体制を時間をかけずに丸ごと獲得できる点が最大のメリットです。既存の顧客基盤も引き継げるため、新規開拓のコストを抑えたまま売上を積み増せます。一方で、建設業許可の承継手続きや労務・安全管理体制の確認は、譲受け前に入念に行う必要があります。

工務店・リフォーム会社の売却相場の目安(実測データ)

中小企業庁「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」(2022〜2024年度に成約した中小M&Aの譲渡側報告)によると、工務店・リフォーム会社が含まれる大分類「建設業」のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値11.6倍、四分位範囲5.9〜22.6倍(n=532)でした。2024年度のみ集計のEV/EBITDAでは中央値5.4倍(n=310)です。

たとえば年間の純利益が2,000万円の工務店で考えてみます。中央値11.6倍を単純に当てはめると約2.3億円、ばらつきの幅(四分位範囲)で見ると約1.2億円〜約4.5億円が、実際に成約した価格帯の目安です。純利益×倍率の機械計算であり、個社の売却価格を保証するものではありません。

この倍率試算は利益が出ている会社を前提にしています。赤字や利益がわずかでも、施工体制や顧客基盤・建設業許可が評価されて売却が成立するケースはあります。詳しくは赤字会社でも売却できる?買い手がつくケースと評価されるポイントで解説しています。

この倍率は大分類全体の集計であり、工務店・リフォーム会社に特化した値ではありません。業種ごとの比較や倍率を使った試算の考え方は会社売却の相場は業種でいくら違う?成約1.4万件の実測倍率で詳しく解説しています。

まとめ

  • 新設住宅着工の減少と職人の高齢化・後継者不在が、工務店・リフォーム業界でM&Aが増える構造的な背景です
  • 買い手の中心は第三者承継、ハウスメーカーによる地場工務店の取り込み、異業種からのリフォーム参入の3パターンです
  • 2020年の制度改正で建設業許可の承継がしやすくなり、事業譲渡でも空白期間なく引き継げるようになりました

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