自社の後継者はまだ決まっていない、でも引退はまだ先の話だろう——そう考えている経営者は少なくないはずです。しかし全国の社長の年齢統計を見ると、そう構えていられる時間は年々短くなっています。本記事では最新の調査データをもとに、承継準備を何歳から始めるべきかを逆算します。
なぜ「社長の年齢」を経営課題として捉えるべきか
後継者問題というと、後継者候補がいるかどうかや、本人の意向にばかり焦点が当たりがちです。しかし承継の成否を左右するもう一つの変数が、現経営者自身の年齢にほかなりません。育成や引き継ぎの準備には一定の時間がかかるため、着手が遅れるほど選べる選択肢は狭まっていきます。年齢は体調や気力の問題としてだけでなく、経営指標の一つとして捉える視点が欠かせません。
社長の平均年齢は60.8歳、上昇はなお止まらない
帝国データバンクが2026年2月に公表した「全国『社長年齢』分析調査(2025年)」によると、2025年末時点における全国社長の平均年齢は60.8歳でした。前年の60.7歳から0.1歳上昇し、35年連続で過去最高を更新しています。
年代別の構成比を見ると、60代が27.5%(前年比0.7ポイント増)、70代が19.5%、80代以上は5.6%で12年連続の上昇となりました。60歳以上の社長が全体に占める割合は52.6%にのぼり、5年ぶりに前年を上回っています。都道府県別では最も高齢な秋田県が62.6歳、最も若い三重県・沖縄県は59.7歳でした。
交代率は低いまま、引退年齢も高止まり
同調査によれば、2024年から2025年にかけての社長交代率は3.84%にとどまりました。前年から0.09ポイント上昇し4年ぶりの増加に転じたものの、水準としては依然として低いままです。交代した企業を見ると、交代前の社長は平均68.5歳、交代後の新社長は平均52.8歳で、その差は15.7歳でした。一般に、交代そのものが起きにくいことが、全体の高齢化を押し上げる一因になっていると考えられます。
承継準備は「何歳から」始めるべきか
中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、事業を引き継ぐことが決まっている後継者候補に「経営者になるために必要だと思う準備期間」を尋ねたところ、「5年以上」との回答が約5割を占めたと紹介されています。先に見たTDB調査で交代前社長の平均年齢が68.5歳だったことを踏まえると、60歳前後には承継の検討に着手しておくのが逆算上の目安になります。親族内承継であれば後継者の育成に、社外への引き継ぎ(M&A)であれば相手探しや条件交渉に、それぞれ相応の時間を要します。「まだ元気だから」という理由だけで先延ばしにできる猶予は、統計が示すほど大きくないのが実情です。
実務への示唆
経営者の高齢化は、統計上の数字だけの話ではありません。承継の準備が整う前に経営者が病気や急死で退くケースでは、相続や株式の分散をめぐる手続きが一気に発生し、経営の空白が生じかねません。実際、代表者の死亡や体調不良を理由とする「後継者難」倒産は近年増加傾向にあります。
先延ばしにしないために、次の3点から着手することをおすすめします。
- 60歳を迎える前後をめどに、後継候補の有無にかかわらず親族内・従業員・M&Aの3類型で承継の選択肢を整理する
- 顧問税理士や取引金融機関、公的な事業承継・引継ぎ支援センターなど、相談先を早い段階で確保する
- 経営者に万一のことがあった場合に備え、株式の所在・代表印の管理・緊急連絡体制を、後継者が未定のままでも文書化しておく
まとめ
- 全国社長の平均年齢は60.8歳で35年連続過去最高を更新、60歳以上が52.6%を占める(帝国データバンク調査)
- 承継準備には5年以上かかるとされ、逆算すると60歳前後が着手の目安になる(中小企業庁 事業承継ガイドライン)
- 準備を先延ばしにするほど、後継者難倒産や経営の空白といったリスクが高まる
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