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個人事業主の事業承継の進め方|親子承継・第三者承継の手続きと税金

個人事業主の事業承継の進め方|親子承継・第三者承継の手続きと税金|M&A Times

店舗や工房を一代で築いてきた個人事業主にとって、誰にどう引き継ぐかは避けて通れない課題です。法人と違って株式という仕組みがないため、引き継ぎには独自の手続きが必要になります。本記事では、個人事業主の事業承継の進め方を、親子承継・第三者承継のパターン別に手続きと税金の観点から解説します。

事業承継の核心は資産の個別移転

株式会社の事業承継は自社株式を後継者に移すことで経営権が移りますが、個人事業には株式に相当する権利がなく、屋号・設備・在庫・取引先との関係といった資産を一つずつ後継者に引き継ぐ必要があります。あわせて、旧事業主は税務署に廃業の届出を、新事業主は改めて開業の届出を行うのが基本の形です。

承継の相手によって進め方は大きく2つに分かれます。子や親族に継がせる場合は生前贈与や相続が中心となり、後継者がいない場合は第三者への事業譲渡が選択肢になります。前提が異なるため、まずどちらの立場に近いかを見極めることが出発点です。

旧事業主と新事業主、それぞれの届出の流れ

個人事業の承継では、旧事業主側と新事業主側の双方で税務署への届出が必要です。国税庁の案内では、事業を廃止・開始した際の届出は原則として事実があった日から1か月以内に、納税地を所轄する税務署へ提出するとされています。

手続き主体主な届出提出期限の目安
旧事業主個人事業の開業・廃業等届出書(廃業)廃業の事実があった日から原則1か月以内
旧事業主所得税の青色申告のとりやめ届出書取りやめる年分の確定申告期限まで
旧事業主消費税関係の届出(事業廃止届出書等)廃業後速やかに提出
新事業主個人事業の開業・廃業等届出書(開業)開業の事実があった日から原則1か月以内
新事業主所得税の青色申告承認申請書1月16日以降の開業は開業日から2か月以内、それ以外は原則3月15日まで

出典: 国税庁タックスアンサーNo.2090「新たに事業を始めたときの届出など」国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」国税庁タックスアンサーNo.4153「個人版事業承継税制(相続税の納税猶予・免除)」中小企業庁「個人版事業承継税制の前提となる認定」(提出期限の延長は令和8年度税制改正による。いずれも2026年7月時点)

加えて、飲食業の営業許可や建設業許可など業種ごとの許認可は、原則として旧事業主から新事業主へそのまま引き継げず、新事業主が改めて申請し直す必要があります。要否や取得期間は業種・自治体で異なるため、早めに所管窓口へ確認しておくことが欠かせません。

承継パターン別に見る税金と制度

親子承継は生前贈与・相続と個人版事業承継税制

子や親族に継がせる場合、店舗や機械設備などの事業用資産を生前贈与するか、相続によって引き継ぐことになります。原則として、事業用資産を無償で譲り受けた後継者には贈与税または相続税が課されます。資産の評価額によっては税負担が大きくなるため、早い段階での準備が重要です。

この負担を軽くする制度として、個人版事業承継税制があります。青色申告(正規の簿記の原則によるもの)を行う事業を対象に、経営承継円滑化法に基づく都道府県の認定を受けた後継者が事業用資産を贈与・相続で取得した場合、贈与税・相続税の納税が猶予・免除される仕組みです。ただし不動産貸付業などは対象外とされているため、自社の事業が対象になるかは事前確認が必要です。

適用を受けるには、事前に個人事業承継計画を都道府県へ提出しなければなりません。令和8年度税制改正により提出期限は2028年9月30日まで延長されましたが、贈与・相続を実行できる期限は従来どおり2028年12月末までとされており、計画を提出しただけでは適用が確定しない点に注意が必要です。資産の生前贈与や相続税対策の基本的な考え方は自社株の生前贈与と相続税対策の記事、認定の枠組みは経営承継円滑化法の解説記事もあわせて参考にしてください。

第三者承継は事業譲渡としての引き継ぎ

子や親族に後継者がいない場合、第三者に事業を引き継いでもらう選択肢もあります。法人のM&Aのような株式譲渡ではなく、屋号・設備・在庫・取引先との契約関係などを資産として個別に譲り渡す事業譲渡の形をとるのが基本です。譲渡の対価は当事者間の交渉で決まり、原則として譲渡益には所得税が課されます。

買い手となる第三者も、開業届や必要な許認可を新たに取得しなければなりません。個人事業や小規模事業の譲渡を仲介する専門家・プラットフォームも増えており、進め方の全体像はスモールM&Aの記事で解説しています。

よくある失敗・注意点

個人事業の承継でつまずきやすいのは、許認可の引き継ぎを軽視してしまうケースです。旧事業主の許認可はそのまま使えないため、新事業主の許可取得が完了する前に営業を切り替えてしまうと、無許可営業になりかねません。

届出の期限を過ぎてしまうことも珍しくありません。青色申告のとりやめ届出書や開業届の提出が遅れると、青色申告の特典を受けられる時期がずれ込む場合があります。個人版事業承継税制についても、対象業種や提出期限の要件を誤解したまま準備を進めてしまう例が見られます。

税理士報酬や許認可申請の実務費用は事業内容や依頼先によって幅があるため、契約前に見積もりを確認することが大切です。費用や進め方に迷う段階では、公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターや税理士へ早めに相談することをおすすめします。

まとめ

  • 個人事業の承継は株式の移転ではなく、資産の個別移転と旧事業主の廃業・新事業主の開業の届出で進む
  • 親子承継は生前贈与・相続と個人版事業承継税制の活用余地があり、第三者承継は事業譲渡の形をとる
  • 許認可の引き継ぎと届出期限は特に見落としやすく、早めに税理士や事業承継・引継ぎ支援センターへ相談する

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