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ドラッグストア業界のM&A動向|売却相場と再編の行方

ドラッグストア業界のM&A動向と再編の行方|M&A Times

ドラッグストアの店頭に立つ経営者にとって、この数年の業界地図の変化は他人事ではありません。近隣に大手チェーンの新店ができたり、取引先の卸から「大手の傘下に入った」という話を聞いたりする機会が増えているはずです。ドラッグストア業界では今、大手チェーンによる寡占化と、地場チェーン・個店の事業承継難を背景に、M&Aが業界再編の主役になっています。

業界の構造とM&Aが起こる背景

ドラッグストアは長年、新規出店によって売上を伸ばしてきた業態です。しかし出店余地の乏しい都市部や郊外が増え、各社は新規出店よりも周辺エリアの地場チェーンを取り込む方向へ戦略の軸足を移しています。この転換こそが、M&Aを業界の主要な成長手段に押し上げた背景です。

M&Aを加速させる要因業界で起きている変化
大手チェーンによる寡占化上位グループが地場チェーンの取り込みでドミナントエリアを広げ、規模の経済を競う場面が増えました。
調剤併設シフトOTC中心の店舗から処方箋を扱う調剤併設型への転換が進み、薬剤師を確保できる企業かどうかが分かれ目になります。
人口減とドミナント競争出店余地が乏しいエリアでは、新規出店より既存店の買収でシェアを取りに行く動きが優先されます。
地場チェーン・個店の後継者難オーナー経営者の高齢化が進む一方で後継者が見つからず、大手・準大手への売却を選ぶケースが増えています。
ドラッグストア業界でM&Aが加速する主な要因

特に深刻なのが地場チェーンや個店における後継者難です。全国的にも中小企業の後継者不在率は高止まりが続いており、ドラッグストアも例外ではありません。後継者が見つからないまま、大手・準大手への売却を選ぶオーナーが増えています。

最近の動向

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の実態調査によると、2024年度の全国総売上高は10兆0307億円(前年度比9.0%増)、店舗総数は2万3723店舗(同682店舗増)でいずれも過去最高を更新しました。当初「2025年に10兆円産業化」としていた目標を、1年前倒しで達成した形です。

同調査では調剤売上高も1兆5205億円(前年比8.4%増)に達し、売上高全体に占める構成比は15.2%まで拡大しました。経済産業省の商業動態統計でも、2025年のドラッグストア販売額は前年比5.5%増、店舗数は同3.6%増と拡大が続き、なかでも食品は同9.1%増と販売額全体の約3分の1を占めています。食品と調剤の両輪をどこまで強化できるかが、店舗の競争力を左右する時代です。

業界再編の象徴が、業界最大手のウエルシアホールディングスと2位のツルハホールディングスの経営統合です。両社は2025年12月1日、株式交換によりツルハHDを親会社、ウエルシアHDを完全子会社とする体制へ移行し、売上高2兆円超・店舗数約5,600の国内最大級のドラッグストア連合が誕生しました。イオンはツルハHD株式の過半を取得して連結子会社化し、統合をヘルス&ウェルネス事業の中核と位置づけています。当初2027年としていた計画を、2年前倒しで実現したものです。

実例:北海道地盤のサツドラホールディングスは2026年6月、三菱商事系の丸の内キャピタルと連携するテラ株式会社によるMBO(経営陣が参加する買収)を発表しました。TOB価格は当初の1株1,220円から1,260円に引き上げられ、富山浩樹CEOが買収後も経営を続ける方針です。大手同士の統合とは別に、地場ドラッグストアが投資ファンドと組んで非公開化するケースも出てきています。

この業界のM&Aの特徴

売り手企業が評価されやすいのは、まず店舗網の立地です。競合が出店しにくいエリアで複数店舗を構えるドミナント立地は、買い手にとって新規出店では得がたい価値になります。調剤薬局を併設できる体制や、確保が難しい薬剤師・登録販売者を抱えていることも、評価を押し上げます。

スキームは、大手同士の統合では株式交換や株式取得が中心である一方、地場チェーンや個店の承継では株式譲渡や事業譲渡が多く使われます。バリュエーションの目線は業績や店舗網の質によって幅があり、一律の相場では語れません。会社売却の相場の考え方を踏まえ、自社の強みを整理しておくことが交渉の出発点になります。

売り手・買い手それぞれの視点

売り手(地場チェーンオーナー)の視点

後継者が不在のまま廃業すれば従業員の雇用も地域の買い物拠点も失われますが、M&Aによる売却はそれを避けながら経営から退く選択肢のひとつです。買い手が大手であれば、仕入れの効率化やシステム投資の負担から解放されるメリットもあります。

買い手(大手チェーン・投資ファンド)の視点

買い手にとっては、新規出店では得にくいドミナントエリアの獲得や、薬剤師をはじめとする人材の確保が主なメリットとなります。連続買収によるロールアップ戦略を掲げる企業にとって、地場チェーンの取り込みは成長戦略そのものです。投資ファンドが主体となる場合は、非公開化後の効率化を通じた企業価値向上が主な狙いになります。

ドラッグストアの売却相場の目安(実測データ)

中小企業庁「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」(2022〜2024年度に成約した中小M&Aの譲渡側報告)によると、ドラッグストアが含まれる大分類「卸売業・小売業」のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値12.0倍、四分位範囲5.9〜21.0倍(n=484)でした。2024年度のみ集計のEV/EBITDAでは中央値7.7倍(n=336)です。

たとえば年間の純利益が2,000万円の会社で考えてみます。中央値12.0倍を単純に当てはめると約2.4億円、ばらつきの幅(四分位範囲)で見ると約1.2億円〜約4.2億円が、実際に成約した価格帯の目安です。純利益×倍率の機械計算であり、個社の売却価格を保証するものではありません。

なお、この倍率試算は利益が出ている会社を前提にしています。赤字や利益がわずかでも、純資産や顧客基盤・人材・許認可が評価されて売却が成立するケースはあります。詳しくは赤字会社でも売却できる?買い手がつくケースと評価されるポイントで解説しています。

この倍率は大分類全体の集計であり、ドラッグストアに特化した値ではありません。業種ごとの比較や倍率を使った試算の考え方は会社売却の相場は業種でいくら違う?成約1.4万件の実測倍率で詳しく解説しています。

まとめ

  • ドラッグストア業界は上位チェーンの統合と地場チェーンの承継難が同時に進み、M&Aが再編の主役になっている
  • JACDS・経済産業省の統計によると市場規模・調剤売上とも拡大が続き、調剤併設と食品強化が店舗の競争力を左右している
  • 売り手はドミナント立地・調剤機能・薬剤師人材が評価されやすく、後継者不在なら早めの検討が選択肢となる

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