M&Aの交渉が条件をすり合わせる段階に進むと、口頭でのやり取りだけでは「言った言わない」のずれが生じやすくなります。そこで使われるのがタームシートです。本記事では意味と基本合意書(LOI)・最終契約書との違い、記載事項を解説します。
タームシートとは
タームシート(Term Sheet)とは、M&Aやベンチャー投資で交渉中の取引条件を箇条書き形式でまとめた書面のことです。英語の「term(条件)」と「sheet(用紙)」の通り、価格や前提条件など主要項目を1〜数枚に凝縮します。たとえば譲渡価格は「5,000万円〜7,000万円」のようにレンジで示すことが一般的です。詳細な条件は後続の基本合意書や最終契約書に委ねます。
ベンチャー投資の場面では出資条件(株価や優先株の内容など)を示す書面として広く使われる語です。本記事では中小企業のM&Aにおける使われ方を中心に解説します。
基本合意書・MOU・最終契約書との違い
| 書面 | 目的 | 法的拘束力 | 作成タイミング |
|---|---|---|---|
| タームシート | 交渉条件の要点整理 | 原則なし | 条件交渉の初期〜中盤 |
| 基本合意書(LOI) | 交渉合意事項の書面化 | 一部条項のみあり | デューデリジェンス開始前 |
| MOU | 基本合意書とほぼ同義で使われることが多い | 一部条項のみあり | デューデリジェンス開始前 |
| 最終契約書(DA) | 取引条件の最終確定 | 全面的にあり | デューデリジェンス完了後 |
基本合意書とMOUは実務上ほぼ同じ意味で使われることが多いです。会社や案件により呼び方が変わります(詳しくは基本合意書(LOI)とはを参照)。タームシートはこれらの合意書を作成する前段階で、条件の骨子だけを素早く共有する目的で使われます。
法的拘束力と記載事項
タームシートは原則として法的拘束力を持たせない条件整理の書面です。ただし独占交渉権や秘密保持など一部条項には拘束力を持たせる場合があります。独占交渉権は買い手が安心してデューデリジェンスに進むための条項です。拘束力の範囲は案件により異なります。
記載事項は案件により幅がありますが、次の項目が一般的です。
- 取引対象(株式・事業の範囲)
- スキーム(株式譲渡・事業譲渡など)
- 想定価格(レンジで示すことが多い)
- 支払条件(一括・分割・アーンアウトの有無)
- 前提条件(デューデリジェンスの実施など)
- 想定スケジュール
実務での意味
売り手にとって
売り手にとってタームシートは条件の言った言わないを防ぐ役割を持ちます。口頭協議の内容を書面で確認しておけば、後の基本合意書や最終契約書の交渉で認識のずれによる後戻りを避けやすくなります。複数の買い手候補と交渉する場合は、各社のタームシートを並べて価格や条件を比較する土台にもなります。
誰が作成するか
タームシートは買い手企業の担当者やFA(フィナンシャル・アドバイザー)・M&A仲介会社が交渉内容をもとにドラフトし、売り手に提示することが多いとされます。売り手側の税理士や弁護士が内容を確認する流れが一般的です。作成自体に別途費用が発生することは少なく、仲介会社・FAへの手数料の範囲で対応されることが一般的です。売り手側で弁護士等の確認を依頼する場合はその費用を事前に見積もっておくと安心です。
まとめ
- タームシートは取引の主要条件を箇条書きで整理した書面で、原則として法的拘束力を持たない
- 基本合意書・MOU・最終契約書とは拘束力と作成タイミングが異なる
- 買い手側がドラフトすることが多く、条件比較や後戻り防止に役立つ
次に読む
- 基本合意書(LOI)とは タームシートの内容を書面化した予備的合意の本命です
- 意向表明書の書き方 売り手が交渉の入口で受け取る書面を理解できます
- 最終契約書(DA)とは 条件交渉の最終工程となる契約書を解説します

