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産業廃棄物処理業のM&A動向|許認可承継と相場

産業廃棄物処理業のM&A動向|許認可承継と相場|M&A Times

産業廃棄物の収集運搬や中間処理・最終処分を担う産業廃棄物処理業は、許可を持つ事業者が全国に約11万者存在する一方、実際に稼働しているのはその約6割にとどまるとされる、中小・零細事業者が大半を占める業界です。経営者の高齢化や後継者不在に加え、新規許可の取得に時間がかかるという業界特有の事情から、既存事業者を買収するM&Aが近年活発になっています。

業界の構造とM&Aが起こる背景

産業廃棄物処理業は都道府県・政令市単位で許可を取得する仕組みのため、事業者は地域密着型の中小企業が多いのが特徴です。環境省の検討会資料「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」によると、産業廃棄物処理業の許可を持つ事業者は約11万者存在する一方、実際に稼働しているアクティブな事業者は約6.4万者と全体の6割程度、産業廃棄物処理を主業(売上高の50%以上)とする事業者は約1.2万者にとどまります。従業員規模でみても100人以上の事業者は全体のわずか2.1%で、圧倒的多数が小規模な体制で運営されています(環境省「平成23年度産業廃棄物処理業実態調査業務報告書」)。

こうした構造の中で、以下のような要因がM&Aを後押ししています。

  • 経営者の高齢化と後継者不在:中小事業者では後継者が見つからず、廃業を避ける選択肢としてM&Aによる会社の存続を検討するケースが増えています
  • 新規許可取得の難しさ:許可の取得には時間と実績の積み上げが必要で、買い手にとっては新規参入より既存事業者の買収の方が早道になりやすい構造があります
  • 環境規制強化への対応負担:施設の維持・更新や法令遵守体制の整備にコストがかかり、体力のある大手グループへの合流を選ぶ事業者もあります
  • 大手による広域再編:収集運搬から中間処理・最終処分までを一貫して手がける総合力を強化するため、大手が地域の中小事業者を買収して事業エリアを広げる動きがみられます

最近の動向

公表統計でみると、産業廃棄物処理業の許可件数は増加傾向が続いています。環境省の発表によると、令和5年度実績(令和6年4月1日時点)の産業廃棄物処理業許可件数は24万8,458件で、前年度比6,552件増となりました。許可件数自体は増えている一方、後継者不在や大手による買収ニーズを背景に、収集運搬業者と中間処理業者の統合など廃棄物処理の一貫体制を築く再編が目立つとされます。

実例:貴金属・非鉄金属リサイクル大手の松田産業(東証プライム、証券コード7456)は2025年2月、産業廃棄物処理・収集運搬を手がける山陽レックと非鉄金属回収のフラップリソース(いずれも広島県)の全株式を取得し子会社化しました。松田産業が展開するリチウムイオン電池リサイクル事業とのマーケット領域拡大を目的とした案件です。

この業界のM&Aの特徴(許認可とスキームの関係)

産業廃棄物処理業のM&Aで最も重要な論点が、許可の承継です。産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可は事業者(法人)単位で交付されるため、事業譲渡のスキームを取ると譲渡先の法人には許可が引き継がれず、原則として新規に許可を取り直す必要があります。新規許可の審査には一定の期間がかかるとされ、その間は事業を継続できないおそれがある点が実務上の大きなハードルになります。

これに対し株式譲渡であれば、許可を持つ法人そのものの株主が入れ替わるだけで法人格は継続するため、許可も原則そのまま維持されます(特別管理産業廃棄物に関する変更届出などの手続きは必要です)。この違いから、産業廃棄物処理業のM&Aでは株式譲渡が選ばれやすい傾向があります。許認可の承継可否が絡む点は、同様に技術者要件や許可の扱いが論点になる建設業のM&Aとも共通する構造です。

優良産廃処理業者認定(優良認定)を受けている事業者は全国で約1千者と、主業者数と比べても少数派です(環境省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」、産業廃棄物処理事業振興財団調べ)。優良認定や最終処分場・運搬車両などの保有資産は買い手にとって評価しやすいポイントとなる一方、認定の承継可否や行政処分歴の有無は案件ごとに確認が必要です。

売り手・買い手それぞれの視点

売却を検討する経営者にとって

自社が保有する許可の種類・品目、車両・処理施設・最終処分場などの設備、優良認定の有無、そして行政処分歴のないコンプライアンス体制は、買い手が重視する評価ポイントになります。後継者不在を理由に廃業を選ぶと許可自体も失効してしまうため、M&Aによる会社の存続を検討する経営者も増えています。売却価格の相場は事業規模や収益力、保有資産により幅があり断定はできませんが、一般的な価格の考え方は会社売却の相場で解説しています。

買収を検討する企業にとって

新規に産業廃棄物処理業の許可を取得するには時間と実績の積み上げが必要なため、既存の許可事業者を買収することで許可・設備・取引先を一括して獲得できる点が大きな魅力です。一方で、買収後に対象会社の許可を維持できるスキームを選べているか、過去の行政処分歴や不法投棄など環境法令違反のリスクがないかは、法務・環境デューデリジェンスで慎重に確認すべき事項です。

産業廃棄物処理業の売却相場の目安(実測データ)

中小企業庁「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」(2022〜2024年度に成約した中小M&Aの譲渡側報告)によると、産業廃棄物処理業が含まれる大分類「サービス業(他に分類されないもの)」のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値13.9倍、四分位範囲7.5〜29.2倍(n=253)でした。2024年度のみ集計のEV/EBITDAでは中央値7.8倍(n=147)です。

たとえば年間の純利益が2,000万円の会社で考えてみます。中央値13.9倍を単純に当てはめると約2.8億円、ばらつきの幅(四分位範囲)で見ると約1.5億円〜約5.8億円が、実際に成約した価格帯の目安です。純利益×倍率の機械計算であり、個社の売却価格を保証するものではありません。

なお、この倍率試算は利益が出ている会社を前提にしています。赤字や利益がわずかでも、純資産や顧客基盤・人材・許認可が評価されて売却が成立するケースはあります。詳しくは赤字会社でも売却できる?買い手がつくケースと評価されるポイントで解説しています。

この倍率は大分類全体の集計であり、産業廃棄物処理業に特化した値ではありません。業種ごとの比較や倍率を使った試算の考え方は会社売却の相場は業種でいくら違う?成約1.4万件の実測倍率で詳しく解説しています。

まとめ

  • 産業廃棄物処理業は許可事業者数約11万者のうち、実働は約6割・主業者は約1割程度と中小・零細事業者が大半を占める構造
  • 事業譲渡では許可が承継されず新規許可申請が必要になるため、株式譲渡が選ばれやすい
  • 後継者不在・規制強化・新規許可取得の難しさを背景に、大手による広域再編や隣接業種との統合を目的としたM&Aが進んでいる

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