借入が事業の身の丈を超えても、主力事業は黒字で、取引先や従業員に支えられ続けている中小企業は少なくありません。第二会社方式は、その黒字事業だけを新しい会社に移し、旧会社は債務ごと整理することで事業と雇用を残す再生手法です。本記事では、この手法の仕組みとスキームの流れ、活用時の注意点を解説します。
第二会社方式とは
第二会社方式とは、過剰債務で財務状況が悪化した会社の収益性のある事業だけを、会社分割または事業譲渡によって別会社(第二会社)に移し、旧会社は不採算事業と債務を抱えたまま清算する事業再生の手法です。
たとえば旧会社に3億円の借入が残っていても、主力事業の年間営業利益が2,000万円あるなら、その事業だけを第二会社に移して稼ぐ力を残し、旧会社は特別清算などで債務を整理します。会社分割か事業譲渡かで、税務上の扱いや債権者保護の手続きが変わります。
スキームの流れ
第二会社方式は、主に3つの段階で進みます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 事業の選別 | 旧会社の事業を、収益性のある事業と不採算事業・過剰債務に仕分けます。 |
| ② 受け皿会社への移転 | 会社分割または事業譲渡で、収益性のある事業を第二会社(新設会社やスポンサー企業)へ移します。 |
| ③ 旧会社の清算 | 不採算事業と債務が残った旧会社を、特別清算や破産などで清算します。 |
旧会社の債権者を害しないよう、第二会社は事業の価値に見合う適正な対価を支払う必要があります。対価が不当に低いと、詐害行為として取り消されたり、破産管財人に否認されたりするリスクがあるためです。
メリットと留意点
メリット
- 収益性のある事業と従業員の雇用を存続させられます。
- 旧会社の債務リスクを遮断でき、スポンサーや金融機関の協力を得やすくなります。
- 中小企業活性化協議会など公的機関が関与すれば、金融機関との調整を進めやすくなります。
留意点
- 対価が不当に低い事業移転は、詐害行為として取り消される可能性があります。
- 建設業許可や旅館業許可などの許認可は当然には引き継がれず、原則として再取得が必要です。
- 経営者保証など経営者個人の債務も、並行して整理する必要があります(経営者保証の解除の流れ)。
実務での意味
公的機関の関与と金融機関調整
中小企業活性化協議会は、産業競争力強化法に基づき47都道府県に設置される公的機関で、旧会社と第二会社双方の事業計画を検証しながら金融機関との調整を仲介します。相談は無料で利用でき、弁護士・税理士など専門家への報酬は原則として利用する会社側の負担です。
スポンサー(買い手)にとって
買収する側にとっては、旧会社の簿外債務や偶発債務を引き継がずに済むため、収益性のある事業だけを取得できる点がメリットです。承継される契約・許認可・従業員との関係は会社分割か事業譲渡かで変わるため、実務では弁護士や税理士に移転対象の精査を依頼します。株式譲渡と事業譲渡の違いも踏まえて検討するとよいでしょう。
経営者にとって
旧会社の経営者にとって、第二会社方式は会社をたたむ決断であると同時に、事業と雇用を残す選択肢でもあります。事業譲渡で事業を移す場合、従業員の転籍には個別の同意が必要なため、早い段階から労働条件を説明しておく必要があります(事業譲渡と従業員の転籍)。経営者保証を負っている場合は、保証債務の整理も並行して進めます。
まとめ
- 第二会社方式は、収益性のある事業を会社分割・事業譲渡で第二会社に移し、旧会社を債務ごと清算する再生手法です。
- 事業の価値に見合う適正な対価で移転しないと、詐害行為として取り消されるリスクがあります。
- 中小企業活性化協議会などの公的機関を活用すれば、金融機関との調整を無料相談から始められます。
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- 赤字会社・債務超過でも売却できるか:債務超過の会社をそのままM&Aで売却できる可能性を知りたい方はこちら。
- 会社分割とは:第二会社方式で使われる会社分割の仕組みを、吸収分割・新設分割の違いから解説しています。
- 廃業とM&A売却の比較:会社をたたむ・残す際の選択肢を費用や従業員への影響で比較しています。
本記事は、中小企業基盤整備機構「J-Net21」の第二会社方式の解説、同機構による中小企業活性化協議会の紹介、東京商工会議所(東京都中小企業活性化協議会)の相談案内を参考にしています。

