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飲食業界のM&A動向|売却相場と再編・承継の動き

飲食業界は、原材料・人件費・物流費の高騰に加え、深刻な人手不足と経営者の高齢化に直面しています。こうした環境下で、廃業ではなくM&Aによって事業や雇用を引き継ぐ動きが広がっています。公開されている統計をもとに、業界の構造とM&Aの特徴を整理します。

業界の構造とM&Aが起こる背景

飲食業は参入障壁が比較的低く、個人・中小の事業者が多い一方、利益率が薄く外部環境の変化に弱い構造です。近年は人手不足が突出して深刻で、非正社員の人手不足を感じる企業の割合は飲食店で65.3%と、全業種平均(30.0%)を大きく上回ると報告されています(帝国データバンク・2025年4月調査)。採用難とコスト高が重なり、単独での存続が難しい事業者が増えています。

最近の動向

帝国データバンクによると、飲食店の倒産は2024年に894件と2000年以降の最多となり、2025年は900件と3年連続で過去最多を更新しました。経営者の高齢化も進み、全国の社長の平均年齢は60.7歳と過去最高を更新、60歳以上が51.7%を占めます(帝国データバンク・2024年)。帝国データバンクの全国「後継者不在率」動向調査(2025年)では、中小企業の後継者不在率は約5割にのぼります。倒産か廃業かという局面で、第三者へ引き継ぐM&Aが現実的な選択肢として存在感を増しています。

実例:株式会社テンポスホールディングス(東証スタンダード)は2026年5月、居酒屋「八剣伝」「酔虎伝」などを運営するマルシェ株式会社(従来は持分法適用関連会社)の第三者割当増資を引き受けると発表しました。議決権所有割合は21.02%から50.59%へ上昇し、マルシェは同社の連結子会社となる見込みで、既存の飲食ブランドを取り込み外食グループとしての規模拡大を図る動きの一例です。

この業界のM&Aの特徴

飲食のM&Aで評価されやすいのは、立地・店舗網、ブランドや看板メニュー、固定客、そして調理・店舗運営のノウハウや人材です。買い手は、ゼロから出店するより既存の店舗・ブランドを取り込むほうが早く、居抜きでの出店コストや採用コストを抑えられます。大手外食グループが複数ブランドを束ねて規模を追う「マルチブランド化」や、調達・セントラルキッチンとの統合による効率化が典型的な狙いです。一方、立地依存・人材流出のリスクもあり、買収後の店舗運営と人の定着が成否を分けます。

売り手・買い手それぞれの視点

売り手(中小・個人店)

後継者不在や資金繰りで悩む前に、ブランドや固定客という価値があるうちに動くほど、引き継ぎ手は見つかりやすくなります。店舗の状態や数字を整えておくことが評価につながります。

買い手(外食グループ等)

出店スピードとブランド獲得が主目的。買収後の人材定着・店舗品質の維持に向けた統合設計が重要になります。

飲食店の売却相場の目安(実測データ)

中小企業庁「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」(2022〜2024年度に成約した中小M&Aの譲渡側報告)によると、飲食店が含まれる大分類「宿泊業・飲食サービス業」のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値11.3倍、四分位範囲4.1〜22.9倍(n=90)でした。2024年度のみ集計のEV/EBITDAでは中央値10.3倍(n=72)です。

たとえば年間の純利益が2,000万円の会社で考えてみます。中央値11.3倍を単純に当てはめると約2.3億円、ばらつきの幅(四分位範囲)で見ると約8,200万円〜約4.6億円が、実際に成約した価格帯の目安です。純利益×倍率の機械計算であり、個社の売却価格を保証するものではありません。

なお、この倍率試算は利益が出ている会社を前提にしています。赤字や利益がわずかでも、純資産や顧客基盤・人材・許認可が評価されて売却が成立するケースはあります。詳しくは赤字会社でも売却できる?買い手がつくケースと評価されるポイントで解説しています。

この倍率は大分類全体の集計であり、飲食店に特化した値ではありません。業種ごとの比較や倍率を使った試算の考え方は会社売却の相場は業種でいくら違う?成約1.4万件の実測倍率で詳しく解説しています。

まとめ

  • 倒産増・人手不足・後継者難が飲食M&Aの背景
  • 立地・ブランド・固定客・人材が評価されやすい
  • 買収後の店舗運営と人材定着が成否を左右する

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