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ガソリンスタンドのM&A動向|売却相場と承継の選択肢

ガソリンスタンド・燃料販売業のM&A動向と承継の選択肢|M&A Times

全国のガソリンスタンド(給油所)数は、ピーク時の平成6年度末(1994年度末)に60,421カ所だったのに対し、令和6年度末(2025年3月末)には27,009カ所まで減り、30年余りで半分以下になりました(資源エネルギー庁調べ)。地場の個人・同族経営が多いこの業界では、燃料需要の減少や後継者難を背景に、廃業ではなく同業や異業種へのM&Aで事業を引き継ぐ動きが広がっています。本記事では、業界の構造とM&Aが起こる背景、承継の選択肢を中立的に整理します。

業界の構造とM&Aが起こる背景

年度末給油所(SS)数
平成6年度末(1994年度末・ピーク)60,421
令和2年度末(2021年3月末)29,005
令和3年度末(2022年3月末)28,475
令和4年度末(2023年3月末)27,963
令和5年度末(2024年3月末)27,414
令和6年度末(2025年3月末)27,009

ガソリンスタンドは地場の個人事業主や中小企業がオーナー経営する例が多く、後継者が親族内にいなければ事業継続が難しい構造です。資源エネルギー庁は市町村内の給油所数が3カ所以下の自治体を「SS過疎地」と定義しており、令和5年度末時点で372市町村が該当します。親族内承継の担い手がいない場合、事業をどうするか早い段階での判断が必要になります。

ガソリン需要は人口減少や自動車の燃費改善によって緩やかに減少しており、資源エネルギー庁の資料によると国内のガソリン需要は2005年度の6,147万klから2020年度には4,523万klまで減っています。今後は電動車の普及度合いによって減少ペースが左右され、業界全体で先行きの不確実性が高まっているとされます。

設備面の負担も重くなっています。消防法令により、老朽化した地下貯蔵タンクには漏えい防止対策や定期点検が義務付けられており、SSの新設には目安で8,000万円以上の投資が必要とされます(資源エネルギー庁「SS過疎地対策ハンドブック」)。老朽化した設備を単独で更新し続けるのは体力的に厳しく、廃業や譲渡を選ぶ事業者も少なくありません。

最近の動向

帝国データバンクによると、2024年のガソリンスタンドの倒産・休廃業件数は184件で、3年連続の増加となりコロナ禍前の水準に迫っています。同社は、後継者難や脱炭素推進によるEV・ハイブリッド車の普及、地下貯蔵タンクの改修・更新義務への対応負担などを、廃業が増える背景として挙げています。倒産や廃業に至る前に、第三者への譲渡で事業と雇用を残す動きが広がりつつあります。

M&Aの形としては、同一エリアで複数店舗を展開する同業者が、近隣の給油所を子会社化や事業譲渡で取り込みエリアシェアを広げるケースが目立ちます。灯油・LPガス販売など周辺事業を手がける事業者が、燃料供給網の維持や顧客基盤の獲得を狙って給油所を承継する例もみられます。給油所単体では体力が続かなくても、グループ化によって設備更新や仕入れのコストを分散できる点がM&Aの狙いです。

実例:神奈川県内でガソリンスタンドを運営していたサンオータスは、2024年2月に横浜市内で給油所を運営する若葉石油を子会社化しました(サンオータス公表の沿革情報より)。同一エリア内の同業を取り込み、店舗網を広げる典型的なM&Aの形といえます。

この業界のM&Aの特徴

ガソリンスタンドのM&Aで評価されやすいのは、まず立地です。幹線道路沿いや住宅地近くの好立地は代替が利きにくく、買い手にとって出店コストをかけずに販路を得られる価値があります。灯油配送や法人向け燃料カードといった既存の顧客基盤、配送ルートも重要な資産です。給油所の敷地や建物そのものに不動産としての価値が見出されるケースもあります。

スキームは株式譲渡や事業譲渡が中心で、複数店舗を持つ事業者であれば一部店舗のみを切り出す事業譲渡も選ばれます。カーケアや自動車整備、レンタカーなど油外事業を併設している場合は、その事業ごと評価対象になることもあります。バリュエーションの目線は個別の収益力や立地条件で大きく変わるため、一律の相場では語れません。

売り手・買い手それぞれの視点

売り手(地場のオーナー経営者)

後継者が見つからないまま廃業すると、設備の解体・撤去費用が発生するうえ、従業員の雇用終了にも対応しなければなりません。廃業と譲渡でどちらが得か早めに比較し、事業や雇用を残せる譲渡先を検討する価値があります。立地や顧客基盤が残っているうちに動くほど、引き継ぎ手は見つかりやすくなります。

買い手(同業・異業種の事業者)

買い手にとっては、出店許認可や設備投資をゼロから行うより、既存の給油所を取り込むほうが早く市場に参入できます。一方で、老朽化した設備の更新費用や土壌汚染の有無は事前に見極める必要があり、取得後の投資額を織り込んだ判断が欠かせません。灯油配送や油外事業との相乗効果をどう設計するかも、買収後の成果を左右します。

ガソリンスタンドの売却相場の目安(実測データ)

中小企業庁「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」(2022〜2024年度に成約した中小M&Aの譲渡側報告)によると、ガソリンスタンドが含まれる大分類「卸売業・小売業」のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値12.0倍、四分位範囲5.9〜21.0倍(n=484)でした。2024年度のみ集計のEV/EBITDAでは中央値7.7倍(n=336)です。

たとえば年間の純利益が2,000万円の会社で考えてみます。中央値12.0倍を単純に当てはめると約2.4億円、ばらつきの幅(四分位範囲)で見ると約1.2億円〜約4.2億円が、実際に成約した価格帯の目安です。純利益×倍率の機械計算であり、個社の売却価格を保証するものではありません。

なお、この倍率試算は利益が出ている会社を前提にしています。赤字や利益がわずかでも、純資産や顧客基盤・人材・許認可が評価されて売却が成立するケースはあります。詳しくは赤字会社でも売却できる?買い手がつくケースと評価されるポイントで解説しています。

この倍率は大分類全体の集計であり、ガソリンスタンドに特化した値ではありません。業種ごとの比較や倍率を使った試算の考え方は会社売却の相場は業種でいくら違う?成約1.4万件の実測倍率で詳しく解説しています。

まとめ

  • 給油所数はピーク比で半減し、地場の同族経営を中心に後継者難と設備更新負担が重なっている
  • M&Aでは同業によるエリア統合や、灯油・LPガス等周辺事業者による承継の動きがみられる
  • 評価されやすいのは立地・顧客基盤・配送網・不動産で、廃業前の譲渡検討が選択肢になる

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