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警備業界のM&A動向とは?売却相場と人手不足時代のポイント

警備業界のM&A動向とは?人手不足時代の会社売却のポイント|M&A Times

警備員という仕事は今、「保安の職業」として全職業の中でもとりわけ深刻な人手不足に直面しています。2025年11月の有効求人倍率は6.79倍と、全職業平均1.12倍の6倍近くに達しました(厚生労働省)。警備業者数は増加を続け、2025年末時点で1万949業者と増加傾向にある一方、現場を支える警備員の高齢化も進んでいます。単独での人材確保に限界を感じる経営者が増える中、他社の人材基盤やエリア網を取り込むM&Aが業界再編の軸になりつつあります。

業界の構造とM&Aが起こる背景

警察庁「令和7年における警備業の概況」によると、2025年12月末時点で警備業法第4条に基づく認定業者(4条業者)は1万949業者、警備員数は59万6,985人です。業者の90.3%は警備員100人未満で、5人以下の零細事業者も26.6%を占めており、労働集約型かつ小規模事業者が多い構造です。営業所ごとに警備員指導教育責任者などの有資格者を配置する必要があり、経営者が高齢化し後継の資格者を確保できなければ、事業の存続そのものが難しくなります。実際、警備員のうち60歳以上は28万2,509人と全体の47.3%を占め、70歳以上だけでも21.6%に達します(同資料)。現場の担い手不足は、経営を続けたい会社にとっても採用競争の激化という形で重くのしかかり、単独での規模拡大よりも他社との統合を選ぶ動機になっています。

最近の動向

厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2025年11月の保安職業従事者(警備員・自衛官・司法警察職員・消防員等を含む区分)の有効求人倍率は6.79倍で、全職業平均1.12倍を大きく上回ります。求人を出しても応募が集まらない状態が常態化しており、警備員を自社採用だけで増やすのは容易ではありません。こうした中、警備会社を買収して人材プールやエリア拠点を一気に取り込む動きが目立ちます。

実例:ヒトトヒトホールディングス株式会社は2026年7月16日、警備業を営むSPD株式会社を傘下に持つSPD&Company株式会社の全株式を、取得価額合計31.6億円で子会社化すると発表しました。SPD株式会社は契約継続率9割超・人材プール3千人超を持つ埼玉県中心の警備会社で、ヒトトヒトHDが拠点を持たない埼玉・群馬・栃木エリアの顧客網と人材プールの獲得が主な狙いに挙げられています(詳細はヒトトヒトHD、警備のSPD&Companyを31.6億円で子会社化)。

この業界のM&Aの特徴

警備業のM&Aで評価されやすいのは、単発の受託ではなく継続的な収益をもたらす契約基盤と、それを支える有資格者・人材プールです。買収スキームは、警備業法上の認定(都道府県公安委員会による4条認定)が法人単位で付与される性質上、株式譲渡が中心になりやすいとされます。株式譲渡であれば法人格が存続するため認定は原則そのまま維持されますが、役員変更に伴う公安委員会への届出は必要です。

一方、事業譲渡では譲受側の法人が認定を持っていない場合、あらためて新規の認定取得が必要になり、審査には一定の期間を要するため、事業運営に空白期間が生じるリスクがあります。スキームの選択とスケジュールの検討には、行政書士など専門家の確認が欠かせません。バリュエーションの目線に確立した相場があるわけではありませんが、契約継続率やストック性のある大型施設との取引実績があるほど評価は積み上がりやすいとみられます。

評価される資産買い手が重視する理由
契約継続率・ストック契約常駐警備など解約されにくい安定収益を取り込める
有資格者(警備員指導教育責任者等)営業所開設・業務拡大に必須で、採用が難しく代替が利きにくい
人材プール規模グループ全体の稼働率向上・繁閑対応に活用できる
エリア・拠点網自社が手薄な地域の顧客基盤を一度に獲得できる
大型施設との取引実績信用力の裏付けとなり新規受注にもつながりやすい

売り手・買い手それぞれの視点

売り手(警備会社経営者)

経営者の高齢化と有資格者の確保難が進む中、契約継続率や人材プールという自社の強みは、単独での維持が難しくなる前ほど高く評価されやすくなります。株式譲渡であれば認定が維持されるため、事業を止めずに引き継げる点も従業員・取引先への説明材料になります。

買い手(警備会社・人材サービス業)

買い手の主目的は、人材確保とエリア補完です。人材派遣・人材紹介業のM&A動向と同様、警備業でも「人」そのものが買収価値の中心であり、買収後は人材プールの融合や稼働率向上によるシナジー創出が課題になります。

警備業の売却相場の目安(実測データ)

中小企業庁「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」(2022〜2024年度に成約した中小M&Aの譲渡側報告)によると、警備業が含まれる大分類「サービス業(他に分類されないもの)」のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値13.9倍、四分位範囲7.5〜29.2倍(n=253)でした。2024年度のみ集計のEV/EBITDAでは中央値7.8倍(n=147)です。

たとえば年間の純利益が2,000万円の会社で考えてみます。中央値13.9倍を単純に当てはめると約2.8億円、ばらつきの幅(四分位範囲)で見ると約1.5億円〜約5.8億円が、実際に成約した価格帯の目安です。純利益×倍率の機械計算であり、個社の売却価格を保証するものではありません。

なお、この倍率試算は利益が出ている会社を前提にしています。赤字や利益がわずかでも、純資産や顧客基盤・人材・許認可が評価されて売却が成立するケースはあります。詳しくは赤字会社でも売却できる?買い手がつくケースと評価されるポイントで解説しています。

この倍率は大分類全体の集計であり、警備業に特化した値ではありません。業種ごとの比較や倍率を使った試算の考え方は会社売却の相場は業種でいくら違う?成約1.4万件の実測倍率で詳しく解説しています。

まとめ

  • 保安職の有効求人倍率6.79倍(2025年11月)が示す通り、警備業界の人手不足は深刻でM&Aによる人材・エリア補完が広がっている
  • 評価されやすいのは契約継続率・有資格者・人材プール・エリア網などストック性のある資産
  • 株式譲渡なら認定は維持されるが、事業譲渡では新規認定取得が必要になるため業法を踏まえたスキーム検討が欠かせない

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