会社をたたむことを考え始めると、まず気になるのが「廃業にはいくらかかるのか」ではないでしょうか。登記や官報公告といった法定費用に加え、専門家報酬や在庫処分の実費も発生するため、総額が見えにくいのが実情です。本記事では、法人の解散・清算にかかる費用の内訳を一次情報にもとづいて整理し、会社売却という選択肢との違いも比較して解説します。
本記事は主に、廃業を検討し始めた法人経営者に向けて、解散・清算の法定費用を中心に解説します。個人事業主の廃業手続きにも触れますが、法人とは費用構造が異なる点にご注意ください。
廃業の法定費用は数万円台
結論から言うと、法人が解散・清算する際の法定費用(登記・公告)自体は合計で数万円台に収まります。総額を大きく左右するのは、司法書士・税理士など専門家への報酬や、在庫処分・設備廃棄・原状回復・従業員退職金といった変動費です。個人事業主の廃業は税務署への届出のみで、法定費用はかかりません。また、費用の把握と同じくらい大切なのが、たたむ前に「この事業は売れないか」を確かめることです。売却できれば、費用を払って事業を閉じるのではなく、対価を受け取って事業と雇用を残せます。
法人の解散・清算にかかる法定費用
法人が解散する場合、会社法にもとづき解散登記・清算人選任登記・清算結了登記という3段階の登記が必要です。登録免許税法では、解散登記に30,000円、清算人選任登記に9,000円の登録免許税が定められており、通常はこの2つを同時に申請するため合計39,000円がかかります。清算手続きがすべて完了したあとの清算結了登記に必要な登録免許税は、別途2,000円です。
これに加えて会社法は、清算開始後に債権者保護手続きとして、2か月以上の期間を定めて債権の申出を官報に公告することを義務づけています。官報の解散公告は1行22文字で計算され、会社の公告料金は1行あたり税込3,947円です。記載事項をひととおり満たすと10行前後になる例が多く、その場合の掲載料金は概算で3万円台後半〜4万円台になります。
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 解散登記の登録免許税 | 30,000円 |
| 清算人選任登記の登録免許税 | 9,000円 |
| 清算結了登記の登録免許税 | 2,000円 |
| 官報の解散公告(目安10行程度) | 3万円台後半〜4万円台 |
| 司法書士・税理士等の専門家報酬 | 依頼先により異なる |
| 在庫処分・設備廃棄・原状回復費用 | 規模・業種により異なる |
| 従業員への退職金 | 就業規則・退職金規程により異なる |
個人事業主の廃業費用
個人事業主が廃業する場合は、法人のような登記手続きは不要です。「個人事業の開業・廃業等届出書」を廃業日から1か月以内に税務署へ提出しますが、この届出そのものに費用はかかりません。あわせて都道府県税事務所への届出も必要ですが、こちらも無料です。ただし在庫処分や取引先への対応、リース契約の解約精算などで実費が発生する点は法人と共通します。
廃業と売却で手元に残る金額は大きく変わる
廃業を選ぶ場合、会社の資産は基本的に処分価格でしか回収できません。設備や在庫は市場価値より低い金額でしか売れないことが多く、原状回復や廃棄、従業員への退職金にも費用がかかります。長年かけて築いた顧客基盤やノウハウといった事業そのものの価値は、廃業ではほとんど手元に残りません。
一方、会社売却では設備や在庫だけでなく、顧客基盤・技術・人材といった事業そのものの価値が対価の対象です。事業が回っている会社であれば、廃業時の処分価格を上回る対価を受け取り、費用を払う側から受け取る側に回れる可能性が十分にあります。
違いはお金の面だけではありません。売却なら従業員の雇用や取引先との取引は原則そのまま続くため、廃業に伴う解雇や取引打ち切りを避けられます。長年支えてくれた従業員・取引先・顧客にとっても、事業が残る売却は歓迎される選択です。安易に廃業を決める前に、まず自社が売れるかどうかを確かめてみる価値があります。どちらが適しているかは事業の収益性や後継者の有無によって異なるため、判断に迷う場合は廃業と売却の比較も参考にしてください。
よくある失敗・注意点
廃業の手続きでは、次のような点でつまずくケースが目立ちます。
- 解散・清算人選任登記や清算結了登記には、それぞれ2週間以内という申請期限があり、うっかり過ぎてしまう
- 官報公告の行数を減らそうと文面を削りすぎ、必要な記載事項が欠けて公告をやり直すことになる
- 在庫処分や設備の廃棄費用を見積もらないまま解散を決め、想定より手元資金が残らない
- 売却であれば得られたはずの手取りと比較しないまま廃業を選んでしまう
法定費用以外の変動費は業種や規模で大きく異なるため、着手前に司法書士・税理士へ概算を確認しておくと安心です。
まとめ
- 解散登記・清算人選任登記の登録免許税は合計39,000円、清算結了登記は2,000円
- 官報の解散公告は10行前後で概算3万円台後半〜4万円台。総額は専門家報酬や在庫処分・退職金など変動費に左右されるため事前の見積もりが欠かせない
- 廃業では事業の価値がほとんど手元に残らない。売却なら対価を受け取り雇用・取引も残せる可能性があるため、たたむ前に売却の検討を
次に読む
- 廃業とM&A売却はどちらを選ぶべき? 費用や従業員の扱い、手取り額の違いを軸に、廃業と売却のどちらが自社に適しているかを比較できます。
- 会社が売れない理由とは 売却を検討しても買い手が見つからないケースの背景と、売れる会社にするための改善点を解説しています。
- 会社売却の進め方完全ガイド 売却を選ぶ場合の全体の流れ・期間・準備を、はじめての経営者にもわかりやすくまとめています。
出典
登録免許税の額は登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索)、官報公告の料金は全国官報販売協同組合の掲載料金ページ、債権者保護手続きは会社法475条以下(e-Gov法令検索)に基づきます(2026年7月時点)。

