M&Aの「リアル」を伝える経済メディア

読了目安 約4分

会社売却の手取りはいくら?税引き後の計算方法

会社売却の手取りはいくら?税引き後の計算方法|M&A Times

会社を株式譲渡で売却するとき、多くの経営者が気になるのは「結局手元にいくら残るのか」という点です。譲渡価格がそのまま手取りになるわけではなく、税金や取得費・譲渡費用を差し引いた金額が実際に受け取れる額になります。本記事では、株式譲渡により会社を個人で売却したオーナーの手取り計算の考え方を解説します。

本記事は、株式譲渡によりオーナー個人が売主となるケースを中心に解説します。会社(法人)が売主となる事業譲渡では課税の構造が異なるため、後述する違いをあわせて確認してください。

結論:手取りは譲渡所得への課税後に決まる

株式譲渡による売却益(譲渡所得)には、原則として所得税・住民税をあわせて20.315%(復興特別所得税を含む)の税率が申告分離課税として課されます。手取り額は、譲渡価格から取得費・譲渡費用を差し引いた譲渡所得に、この税率を適用した税額を差し引いて求めます。税目の内訳は会社売却にかかる税金で詳しく解説していますので、あわせて確認してください。

なお、税率や控除の制度は税制改正により変わることがあります。実際の申告にあたっては、国税庁の最新情報を確認するか、原則として税理士に相談することをおすすめします。

ステップ内容
1. 譲渡価格の確定買い手との交渉・契約で価格が決まる(相場の決まり方を参照)
2. 譲渡所得の算出譲渡価格から取得費・譲渡費用を差し引く
3. 税額の算出譲渡所得に20.315%の税率を適用する
4. 手取りの算出譲渡価格から税額を差し引く

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費とは株式を取得した際にかかった費用で、会社設立時の出資額や、過去に株式を買い増した際の取得価額などが該当します。譲渡費用とは売却にあたって直接かかった費用で、M&A仲介会社への手数料や契約書作成の費用などです。

たとえば、譲渡価格が1億円、取得費が500万円、譲渡費用が300万円だったとします。この場合、譲渡所得は1億円から800万円を差し引いた9,200万円です。税額は9,200万円に20.315%を掛けた約1,869万円となり、手取りは譲渡価格1億円から税額を差し引いた約8,131万円です。実際の金額は取得費の証明状況や契約内容により変わるため、あくまで目安として捉えてください。

役員退職金の活用で手取りが変わる

売却の対価をすべて株式譲渡の代金として受け取るのではなく、一部を役員退職金として受け取る設計を取り入れるケースがあります。退職所得には退職所得控除があり、株式譲渡益とは異なる計算方法で課税されるため、組み合わせ方によっては手取りが変わることがあります。

ただし、役員退職金の金額は在任期間や功績に照らして合理的な範囲でなければならず、過大と判断されると損金算入が否認されるリスクがあります。具体的な設計は会社の状況により異なるため、原則として税理士など専門家に相談したうえで進めることをおすすめします。活用の考え方は役員退職金を活用した節税で詳しく解説しています。

事業譲渡と株式譲渡で異なる課税の構造

会社の売却には、オーナー個人が株式を売る株式譲渡と、会社(法人)が事業を売る事業譲渡の2つのスキームがあります。株式譲渡と事業譲渡の違いで詳しく比較していますが、手取りの構造という観点では、課税される主体が異なる点が重要です。

株式譲渡では売主はオーナー個人であり、譲渡所得に対して個人の税率(20.315%)が課税されます。一方、事業譲渡では売主は法人であるため、対価は一度法人に入り、法人税等が課税されます。その後、オーナーが役員退職金や配当などの形で資金を受け取る際に、さらに課税される可能性があります。そのため、同じ売却価格であっても、スキームによって最終的な手取りが変わることがあります。どちらが適しているかは会社の状況により異なるため、会社売却の進め方もあわせて確認しながら、専門家に相談して判断することをおすすめします。

よくある失敗・注意点

  • 税引き前の譲渡価格だけで資金計画を立ててしまい、想定より手取りが少なく戸惑う
  • 役員退職金の金額を売却直前に急いで決め、合理性を欠いた設定にしてしまう
  • 税率や控除の制度は年度により変わることがあるため、契約締結前に最新の情報を確認しない

まとめ

  • 株式譲渡による売却益には、原則として所得税・住民税あわせて20.315%が申告分離課税として課される
  • 手取りは、譲渡価格から取得費・譲渡費用を引いた譲渡所得に税率を適用した税額を差し引いて求める
  • 役員退職金の活用や事業譲渡との違いにより、同じ売却価格でも手取りが変わることがある

次に読む