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フィットネスジム業界のM&A動向|売却相場とポイント

フィットネスジム業界のM&A動向|24時間ジム・パーソナルジムの売却|M&A Times

「会員は増えているのに、なぜか利益が残らない」——24時間ジムやパーソナルジムを経営する方から、こうした声を聞く機会が増えています。フィットネス市場全体は拡大局面にある一方で、資本力のある大手のロールアップと小規模ジムの淘汰が同時に進んでいます。本記事では、この業界でM&A・事業承継を検討し始めたオーナー向けに、最新の動向と売却の実務ポイントを解説します。

業界の構造とM&Aが起こる背景

フィットネスクラブ業界では、駅前や住宅街への出店競争が続いています。24時間型の無人ジムや低価格帯の「コンビニジム」業態が相次いで参入し、会員獲得競争は年々激しくなりました。トレーナーやスタッフの採用難、家賃・光熱費の上昇も重なり、体力のない小規模事業者ほど収益を圧迫されやすい構造です。

パーソナルトレーニングジムや総合クラブをオーナー1人で切り盛りしてきた経営者にとって、深夜対応や設備更新、複数店舗のシフト管理は年々負担が重くなります。後継者が見つからないまま体力の限界を迎える前に、事業譲渡や会員基盤ごとの売却で経営を引き継ぐ選択肢が現実的になっています。

最近の動向

帝国データバンクが2025年5月に発表した「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査(2024年度)によると、2024年度のフィットネス市場規模は7100億円前後に達し、コロナ禍前の2019年度(7085億円)を上回る過去最高水準になる見通しです。大手15社の店舗数は2024年度末で約6500店に達し、10年前の2.3倍に拡大しました。自店の周辺にも、この10年で低価格帯ジムが新規出店してきた実感がある経営者は多いはずです。

同調査では、2024年度に損益が判明した約80社のうち黒字は48.8%にとどまり、減益15.9%・赤字31.7%と、業績悪化企業が合計47.6%を占めました。市場全体が拡大していても、個々のジムの収益は二極化しているという点は、売却を検討するタイミングを考えるうえで重要な事実です。

東京商工リサーチが2024年3月に発表した調査では、2023年度(2023年4月〜2024年2月)のフィットネスクラブの倒産は28件で、統計を開始した1998年以降で最多となりました。うち71.4%にあたる20件が販売不振によるもので、いずれも資本金1億円未満の小規模事業者でした。大手が出店を続ける一方で、単独店・小規模チェーンの経営破綻が目立った年だったといえます。

実例:2026年7月15日、女性専用パーソナルトレーニングジムを運営するフィットクルー(東証グロース、469A)は、VALX(東京都渋谷区)が展開する24時間型フィットネスジム「VALX GYM」事業を事業譲渡で譲り受けることで基本合意したと発表しました。取得予定日は2026年11月1日で、ジム事業の収益基盤強化と顧客層拡大が目的とされています(詳細は当サイトの既報を参照)。

この業界のM&Aの特徴

フィットネスジムのM&Aで評価されやすいのは、会員基盤(会員数・継続率)、立地条件、トレーナーなどの人材、そしてブランド力です。特に会費収入が安定している会員基盤は、買い手にとって将来のキャッシュフローを見通しやすい資産として重視されます。

資産買い手が確認するポイント
会員基盤会員数・継続率・平均在籍期間
立地最寄駅からの距離・商圏人口・競合状況
人材トレーナーの資格・指名客の有無
契約関係賃貸借契約の残存期間・承継可否、フランチャイズ契約の有無

スキームは事業譲渡が中心です。株式譲渡と異なり、店舗ごと・事業ごとに切り出して譲渡できるため、複数店舗のうち一部だけを譲渡したり、不採算店舗を除外したりする際に選ばれやすい方法です(株式譲渡との違いはこちらの記事で解説しています)。ジムは賃貸物件で営業しているケースが大半のため、賃貸借契約を貸主の承諾を得て買い手に承継できるかどうかが実務上の最大の焦点になります。フランチャイズ加盟店の場合は、本部の事前承認も必要です。

バリュエーションの目線は会員数・稼働率・立地・設備の状態によって幅があり、一律の相場を示すことはできません。仲介会社やM&Aアドバイザーに相談し、直近の会員動向や賃貸借契約の残存期間を整理したうえで、複数の評価を比較することが現実的です。

売り手・買い手それぞれの視点

売り手にとっての視点

単独経営のオーナーにとって、事業譲渡は「閉店による会員の喪失」を避けながら経営から退く手段になります。居抜きでの譲渡であれば、内装や設備をそのまま引き継げるため、原状回復費用を抑えやすい点も利点です。一方で、会員への説明や既存スタッフの雇用継続について、買い手との交渉が必要になります。

買い手にとっての視点

買い手にとっては、新規出店に比べて開業までの期間を短縮でき、既存の会員基盤を引き継げる点が事業譲渡の魅力です。特に大手による小規模ジムのロールアップでは、立地の空白地帯を埋める目的で個店を取得するケースがみられます(美容室・サロン業界でも同様の再編が進んでおり、こちらの記事で紹介しています)。譲受にあたっては、賃貸借契約の承継条件や会員の継続率、設備の老朽化度合いを事前に確認することが欠かせません。

フィットネスジムの売却相場の目安(実測データ)

中小企業庁「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」(2022〜2024年度に成約した中小M&Aの譲渡側報告)によると、フィットネスジムが含まれる大分類「生活関連サービス業・娯楽業」のPER(株式譲渡価額÷純利益)は中央値9.5倍、四分位範囲5.8〜18.2倍(n=102)でした。2024年度のみ集計のEV/EBITDAでは中央値5.1倍(n=72)です。

たとえば年間の純利益が2,000万円の会社で考えてみます。中央値9.5倍を単純に当てはめると約1.9億円、ばらつきの幅(四分位範囲)で見ると約1.2億円〜約3.6億円が、実際に成約した価格帯の目安です。純利益×倍率の機械計算であり、個社の売却価格を保証するものではありません。

なお、この倍率試算は利益が出ている会社を前提にしています。赤字や利益がわずかでも、純資産や顧客基盤・人材・許認可が評価されて売却が成立するケースはあります。詳しくは赤字会社でも売却できる?買い手がつくケースと評価されるポイントで解説しています。

この倍率は大分類全体の集計であり、フィットネスジムに特化した値ではありません。業種ごとの比較や倍率を使った試算の考え方は会社売却の相場は業種でいくら違う?成約1.4万件の実測倍率で詳しく解説しています。

まとめ

  • フィットネス市場全体は拡大していますが、収益は二極化しており、小規模ジムの倒産・淘汰も同時に進んでいます
  • M&Aでは会員基盤・立地・人材が評価対象になり、事業譲渡が中心のスキームです
  • 賃貸借契約の承継とフランチャイズ本部の承諾が、実務上の最大の焦点になります

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