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役員退職金を活用した会社売却の節税

役員退職金を活用した会社売却の節税|M&A Times

会社を売却する際、譲渡対価をすべて株式譲渡益として受け取ると、想定より手取りが少なくなると感じる経営者は少なくありません。実は、対価の一部を役員退職金として受け取る設計により、税負担を抑えられる場合があります。本記事では、役員退職金を活用した節税の仕組みと、実務上の注意点を解説します。

結論・全体像

株式譲渡対価の一部を役員退職金として受け取ると、退職所得控除や2分の1課税といった税制上の優遇により、株式譲渡益として受け取る場合より手取りが増えることがあります。ただし、勤続年数が短い場合や退職金額が過大な場合は優遇が制限されるため、事前の設計と税理士への相談が欠かせません。売却対価全体にかかる税金については会社売却でかかる税金で整理していますので、あわせて確認してください。

退職所得課税の優遇と株式譲渡益課税との違い

株式譲渡による利益(譲渡所得)は、原則として申告分離課税の対象となり、所得税・復興特別所得税・住民税をあわせて税率20.315%が一律で適用されます。取得費や仲介手数料などを差し引いた譲渡益に対して、金額の多寡にかかわらず同じ税率がかかる点が特徴です。

一方、退職金として受け取る所得(退職所得)には、次の2つの優遇があります。

  • 退職所得控除額を退職金額から差し引ける(勤続年数20年以下は「40万円×勤続年数」、20年超は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算)
  • 控除後の金額をさらに2分の1にしてから課税所得とする(原則として。役員等勤続年数が5年以下の場合はこの2分の1課税が適用されない)

退職所得は他の所得と分離して計算されますが、税率は株式譲渡益のような一律20.315%ではなく、所得税の累進税率(5%~45%)と住民税(10%)が適用されます。そのため、控除と2分の1課税による課税所得の圧縮幅が大きいほど、結果的に株式譲渡益課税より有利になりやすい構造です。

【計算例】退職金3,000万円、勤続20年の場合
退職所得控除額=40万円×20年=800万円
退職所得の金額=(3,000万円-800万円)×1/2=1,100万円
この1,100万円が、他の所得と分離して累進税率で課税される対象額となります。仮に同額を株式譲渡益として受け取った場合は、3,000万円に対してほぼそのまま20.315%が課税されるため、課税対象額の圧縮効果が大きく異なります。

どんな場合に有利か・金額の決め方

役員退職金の活用が有利になりやすいのは、主に次のようなケースです。

  • 売り手の役員勤続年数が長く、退職所得控除額を大きく確保できる場合
  • 買い手側も、退職金を損金算入することで法人税負担を抑えられ、譲渡対価の一部を退職金に振り替える調整に応じやすい場合
  • 売却対価が大きく、株式譲渡益課税と退職所得課税の差が金額として無視できない場合

退職金の金額は、一般に功績倍率法(最終報酬月額×役員勤続年数×功績倍率)で算定されることが多く、業種や役職に応じて功績倍率の目安が用いられます。ただし絶対的な基準ではなく、会社の規模や利益水準、同業他社の水準なども踏まえて総合的に判断する必要があります。金額の妥当性は、企業価値評価の考え方とあわせて検討すると整理しやすくなります。企業価値評価の記事もあわせてご確認ください。

よくある失敗・注意点

注意点内容
過大退職金の損金不算入功績倍率などから見て不相当に高額と判断されると、超過部分が買い手側で損金不算入となるリスクがあります
実質的な価格調整である点退職金への振り替えは譲渡対価総額の内訳変更にすぎず、買い手との事前合意と契約書への明記が不可欠です
短期勤続年数の役員役員等勤続年数が5年以下の場合、2分の1課税が適用されず優遇効果が小さくなります
資金繰りへの影響退職金支給には会社の資金流出を伴うため、買い手側のキャッシュフローへの影響も考慮が必要です
役員退職金活用時に確認しておきたい主な注意点

退職金と株式譲渡対価の配分は、株式譲渡か事業譲渡かというスキーム選択とも関わってきます。スキームによって税務上の扱いが異なるため、株式譲渡と事業譲渡の違いも押さえておくと判断しやすくなります。また、最終契約書に退職金支給の条件を明記しないと、後日買い手側と認識がずれるおそれがあるため、契約段階での擦り合わせが重要です。

まとめ

  • 役員退職金は退職所得控除と2分の1課税(原則)により、株式譲渡益課税より税負担が軽くなる場合があります
  • 役員等勤続年数が5年以下だと2分の1課税が適用されず、優遇効果が限定的になります
  • 退職金額は功績倍率法などで算定しつつ、過大退職金や買い手との調整リスクを踏まえ、税理士に相談のうえ原則として契約に明記することが大切です

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